経験者の今野泰幸が明かすザックジャパン崩壊の理由 なぜW杯で「自分たちのサッカー」は破綻したのか?

コロンビア戦では先制点を許すPKを与える形となってしまった【写真:Getty Images】
コロンビア戦では先制点を許すPKを与える形となってしまった【写真:Getty Images】

1勝もできずグループリーグ敗退で涙

 今野は第2戦のギリシャ戦でスタメンに復帰。前半38分、ギリシャのコンスタンティノス・カツラニスが2枚目のイエローカードで退場となり、数的優位に立った日本は圧倒的にボールを保持したが、引いて守りを固めてきた相手を崩すことができず、勝たなければいけなかったゲームを0-0のスコアレスドローで終えた。

 グループリーグ突破へ勝利が絶対条件となったコロンビア戦は、前半16分にスルーパスに反応した相手FWアドリアン・ラモスに対して、今野が果敢にスライディングを仕掛けるも、ファウルを取られてPKを献上。先制点を許すと、岡崎慎司(現シント=トロイデン)のゴールで同点に追い付いて迎えた後半には途中出場したハメス・ロドリゲスに後半10分、同37分とアシストを決められて2失点、さらに同44分にはハメスにダメ押しの4点目を挙げられ、1-4で敗れた。今野はハメスと対峙して世界との差を感じたという。

「コロンビアは前半から選手全員レベルが高かったですけど、後半から出てきたハメスは、衝撃的でした。1本のパスで流れを変えられるし、とにかくサッカーの強度が高い。常に自分がボールをもらって、ゲームを作っていく。しかも、得点を取れる位置まで来るので、ピッチの中でどこにでもいるという印象を受けました。質の違いとともに、しっかり得点やアシストといった目に見える結果を残す。これがビッグクラブに行くスターなんだと思いました」

 2006年のドイツW杯に臨んだチームに並ぶ、「日本史上最強」の呼び声が高かった“ザックジャパン”は、1分2敗と1勝もできずにブラジルの地を去ることになった。長友や内田篤人は敗退翌日のメディア対応で涙を浮かべたことはまだ記憶に新しいが、今野は後輩たちの当時の気持ちをこのように推察する。

「長友やウッチー(内田)は2010年(の南アフリカ大会)を経験して、2014年で一番いい状態に持っていって、そこで勝負しようという思いがあったはずです。4年間自分のやれることをやってきたから、負けた時の悔しさも大きく、すべてが消えてなくなってしまったみたいな感じで、疲れもどっと来ただろうし、涙も出たんだと思います。逆に、なかなか試合にも出られず大会が終わってしまった清武(弘嗣)や酒井宏樹は、『次の大会は、自分が中心になってW杯で上位に行くんだ』という気持ちで、敗退翌日にはグラウンドで練習していました。

 選手の中でも、2つのパターンがありましたね。僕ですか? いや、もう涙ですよ(笑)。正直、2010年で(W杯は)最後だと思っていたなかで、ザッケローニ監督が呼び続けてくれたので、4年間はとにかく自分を高めることに全力を尽くしたし、いろんなことをトライしながらやりました。自分の力を100%発揮できず、悔しさともどかしさで涙が出ました。最後のロッカールームでも、うるっと来たのは覚えています。ザッケローニ監督は人柄も良くて、嫌いな人はいない。通訳の矢野(大輔)さんはちゃんと監督の感情に合わせて伝えてくれていたので、矢野さんが悲しそうな声で言葉を発していたのは印象深いです」

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