武藤嘉紀は「戦術批判」をしていない 英メディア報道の“真実”を現地取材記者が告白

トットナム戦後、武藤に謝罪 ブルース監督は「信じてくれた」

 トットナム戦で武藤はベンチにいた。あの批判記事が原因でスカッドから追放されるかもしれないと、背筋が凍るような予感もしたが、幸いそれはなかった。

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 しかし強敵トットナムとのアウェー戦。武藤が主役となったネガティブな記事が出た直後の試合で大敗でもしたら、戦術批判の件が蒸し返されるかもしれない。ところが驚いたことに、ニューカッスルは規律の高い守りでトットナムの波状攻撃を跳ね返し続け、ジョエリントンがワンチャンスをものにして、前半を1-0で折り返した。

 ハーフタイムに、今度はニューカッスル広報と話をした。すると今回の武藤の戦術批判報道は、チーム内で全く問題になっていないという。1トップが孤立していたのは、あの試合で武藤だけではなかったし、誰の目にも明らかな事実だったこと。それに「スティーブ(ブルース監督)がヨシと直接話をした結果、監督がこの問題を不問に付した」というのだ。

 詳細は分からないが、一応、クラブ内では“問題なし”として決着しているという。

 となれば、後は私が直接、武藤選手に謝るだけだった。

 昨季はUEFAチャンピオンズリーグ決勝進出を果たし、素晴らしい新スタジアムが完成して今季のさらなる上昇を狙う強豪トットナムを相手に、アウェーで壮絶な1-0勝利を飾った試合直後、武藤は記者が選手を囲むミックスゾーンに現れると、すぐに我々を見つけた。そしてカラッと笑って開口一番、「今日は変なこと、書かないで下さいよ」と言った。その笑顔に勇気付けられ、私は「あの記事は全部俺の責任、申し訳ない」と謝罪した。

 しかし、やはり監督に査問されたという。監督室に呼ばれて事情を聞かれたらしい。もちろん英国人記者の取材に応じていない武藤には、記事の出どころは見当もつかない。「俺は何も言っていない」ときっぱり言うと、「監督が信じてくれた」という。本当のことだし、熱血漢の武藤のことだから、毅然と言い切ったのだろう。その態度には疑わしいところが全くなかったに違いない。しかし、なかには疑り深い監督もいて、こうした報道があれば次の試合でベンチ外に追いやるケースも少なからずある。ラッキーなことに、ブルース監督はそうではなかった。

 ただし、武藤にしっかり念を押された。もう日常生活には困らない程度の会話はできるが、自分はまだ英語で十分に自分の考えを表現できない。だから誤解を招くこともあるので、英語の取材を受けない。それなのに、自分の与り知らないところで勝手に翻訳されて、今回のように見出しが一人歩きするようなことが起きるのは「困ります」と言われた。

 全くその通りで、ぐうの音も出なかった。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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