武藤嘉紀は「戦術批判」をしていない 英メディア報道の“真実”を現地取材記者が告白

ニューカッスルのオーナーを務めるマイク・アシュリー氏(左)【写真:Getty Images】
ニューカッスルのオーナーを務めるマイク・アシュリー氏(左)【写真:Getty Images】

格下相手に敗れ開幕2連敗、地元メディアは“オーナー批判”の糸口を探す

 しかし、日本の報道陣の場合はそうはいかない。武藤あってのニューカッスルであり、それは吉田のサウサンプトン、そして昨季までの岡崎のレスターも然りである。彼らのコメントがなければ記事が作れない。というわけで、日本人が移籍したクラブの広報には、まずそのあたりの事情をよく理解してもらう。

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 ただし最近ではプレミアのグローバル化が進み、クラブ側の外国人プレスへの対応も驚くほど良くなった。日本人選手の囲み取材も快く応じてくれる。昔は取材申請さえ下りないこともたびたびあったし、選手との接触もかなり制限された。それが今では、試合の勝敗に関係なく、たとえ試合に出ない場合でも、基本的に武藤は取材に応じてくれる。

 しかし、英国人記者に取材を受ける場合は違う。負けた試合、特にこのノリッジ戦のように格下にいいところなく大敗した試合後ならなおさらだ。大抵の選手がコメントを求める現地記者団の前を無言で、険しい顔つきで通り過ぎて行く。負け試合の直後で頭に血が上っているうえ、アドレナリンがまだ体中を駆け巡っている状態でうっかり失言でもしたら、翌日の朝刊で大騒ぎされてしまうからだ。

 もしもそういう試合でコメントをしている選手がいたとしたら、それはチームの主将やマスコミ慣れしたベテランのスポークスマン的な選手で、その発言の大部分が「今日は相手が強かった」「相手を褒めるべき」「サッカーにはこんな日もつきもの」という、ありきたりの言葉が判で押したように繰り返されている場合が多い。

 無論、このノリッジ戦の場合、惨敗したニューカッスルの選手が迂闊なことを言うのは禁物だった。それも英メディアが、ニューカッスルを批判する糸口を探していたからだ。その最大の標的は、補強を渋るオーナーのマイク・アシュリー氏である。

 話は6月下旬に遡る。昨季終了直後に報道されたニューカッスルのアラブ大富豪への売却話は遅々として進まず、なんの進展も見せないままプレシーズンが近づいていた。その最中、2シーズン連続で“降格確実”と評価された戦力でプレミア残留を決めて、サポーターの間では英雄的存在だったラファエル・ベニテス監督が、売却が決まらず、例のごとくのらりくらりと補強に煮え切らない態度を続けるオーナーの対応にしびれを切らして契約延長を拒否。さっさと中国へ逃げ出してしまった(大連一方の監督に就任)。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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