武藤嘉紀は「戦術批判」をしていない 英メディア報道の“真実”を現地取材記者が告白

今季からニューカッスルを率いるブルース監督【写真:Getty Images】
今季からニューカッスルを率いるブルース監督【写真:Getty Images】

8月19日の午後、懇意にしていた地元紙記者から電話がかかってきた

 そしてすったもんだの挙句、招聘されたのがスティーブ・ブルース監督だった。選手時代にはマンチェスター・ユナイテッドの主将を務めたことでも知られた名センターバック。しかも地元ニューカッスル出身で、父親譲りのマグパイズ・サポーターとしても有名だ。

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 ところが監督としては、近年チャンピオンシップ(英2部相当)のクラブに定着し、プレミアのチームを率いるには力量不足の印象は否めない。辛辣な英メディアのなかには「初期段階では候補にも上がらず、11番目の候補者だった」という記事を出したところもあった。

 つまり、希望した監督候補に立て続けに断られ、ついには地元出身で“どんなに吝嗇(りんしょく)なオーナーがいようと、ニューカッスル監督ならぜひやりたい”というブルースしか、頼める相手がいなくなっていたというストーリーができ上がってしまったわけだ。

 そのブルース監督が開幕2連敗を喫して、ほら見たことかと、ベニテスに見捨てられたクラブ経営陣を攻撃したい英メディアは、目を血眼にしてその糸口を探していた。

 こうした背景もあって、今回の武藤報道が生まれたのである。

「武藤のコメントをくれないか」と、「クロニクル」のニューカッスル番を務めるリー・ライダー記者から電話がかかってきたのは、8月19日の午後だった。ノリッジ戦後に喋ったニューカッスル選手が皆無で、締め切り間近でネタがないという。

 もちろん断った。確かに、ライダー記者とは武藤のニューカッスル移籍以来、様々な情報交換をしており、昨季のユナイテッド戦で武藤がプレミア初ゴールを奪った際には、そのコメントも英訳して渡した。

 しかし、今回の負け試合となれば話が違う。コメントを英メディアに渡せば、どんな使われ方をされるか分からない。だから正直にそう言った。しかし、どんな様子だったかと聞かれ「見せ場を作れずがっかりしていた」、前半のジョエリントンも孤立していたが、武藤も「孤立したと感じていた」と話した。あくまで記者同士の雑談の範囲内でだ。

 そのうえで、口頭で「自分の力でチームを変えたい」「もっとハードに練習する必要がある」「個人の力が重要になると思う」というコメントなら“使ってもいい”と言って渡した。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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