武藤嘉紀は「戦術批判」をしていない 英メディア報道の“真実”を現地取材記者が告白

武藤がノリッジ戦後に取材対応をした相手は2人の日本人記者のみ

 この日、8月17日のプレミアリーグ第2節ノリッジ戦(1-3)もそうだった。いや、同日にサウサンプトンがホームでリバプールと対戦していたため、試合後に武藤を囲んだのは私ともう一人の日本人記者の2名だけで、いつもより寂しい取材になった。

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 もちろん、武藤は我々には話をした。

「いや、きつかったです。チームとして、覇気がなかったというか、エネルギーがなかったというか。相手がマンチェスター・シティとか、そんな格上と戦っているような……。引いてしまって、前と中盤の間がぽっかり空いちゃって、ボールが来ても孤立している。そして(相手のDF)3、4人に一気に詰められるっていう。FWとしてもチームとしても、非常に苦しい試合だったんじゃないかと思います」

 0-3の状況で出場し、守備を優先した相手は1トップの武藤をさらに厳しくマークした。今季昇格組のノリッジを相手に1点を返すのがやっとで、ニューカッスルは1-3で完敗。その敗戦に関する武藤の感想からは、何もできなかった自分に対する失望感がにじみ出ていた。

 ただし、武藤がここまで率直に語ったのは、このコメントが日本メディアのみを対象にしたもので、英国では出ないことが大前提になっているからだ。

 日本人選手の取材に関しては、クラブ広報とも暗黙の了解がある。武藤のニューカッスル、または吉田が所属するサウサンプトン、昨季まで岡崎が活躍したレスターの広報は、彼らの移籍後、日本の報道陣と様々な情報交換をしたうえで、最終的には我々の要望を受け入れる形で特例を作ってくれた。それは試合後に、必ず目当ての日本人選手と話をさせてもらうということだ。

 プレミアリーグの場合、基本的に試合後の選手の取材は非常に難しい。放映権のあるテレビ局の取材には応じるが、俗に言うペン記者(新聞、雑誌などの記者)の取材を受ける義務はない。実際、勝った試合で活躍した選手が気まぐれに取材に応じる程度だ。けれども、それも英国メディアが選手の言葉尻を捕まえて“煙のないところにも火を立てる”ような見出しを作るからだろう。選手側もそれはよく分かっていて、放言癖のあるような人気選手が“止まってくれ”と懇願する記者団の前を、「ダメダメ」とばかりに手を振り、苦笑しながら通り過ぎる光景はよく見かける。

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森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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