J1広島、首位快走の陰に「青山中心論」あり 主将の“成熟”に見える新たな強みとは?

“リトリート”の3バック回帰ではなく、“アグレッシブ”な4バックを選択

 では、どうして守備で試合の主導権を握ることができるのか。もちろん、FWのプレッシャーがファーストインパクトで、そこから2列目の連動によって相手のプレーを限定させていくわけだ。

【注目】白熱するJリーグ、一部の試合を無料ライブ配信! 簡単登録ですぐ視聴できる「DAZN Freemium」はここから

 もちろん、プレッシングサッカーの原則は、今やサッカーの常識であろう。コンパクトゾーンを作るのも、プレッシングを有効化するための一手段であり、プレッシングを続けるのはボールを奪うため。それもまた、誰もが知っていることだろう。

 これまでの広島は、プレッシングではなくリトリート、つまりラインを下げてブロックを作り、低い位置で相手のミスを誘ってボールを取ることを主眼としていた。プレッシングとリトリートを比較して、プレッシングが優位だというつもりはない。というよりも、広島はリトリートで3度の優勝を成し遂げた。身も蓋もない言い方にはなるが、しっかりと守れて勝利できるのであれば、どういう形であろうとも悪くないのだ。

 とはいえ、広島の戦術は昨季、機能不全に陥っていた。栄光を築いた森保一前監督の後を引き継いだヤン・ヨンソン監督は、応急的な手当をしてなんとか残留にまで持ち込んだ。しかし、1年間を通して結果を残すためには、対処療法ではなく根本的な治療が必要であることを城福監督は、よく知っていた。だからこそ、基本からやり直したのだ。「高いレベルのベーシック」という言葉をキーワードにして、フォーメーションだけではなく闘い方も――。

 実は城福監督はキャンプの間、3-4-2-1も試している。慣れ親しんだ形でプレーすると、チームは上手く流れる。だが、それでは根本的な治癒にはならない。リトリートする守備では、3バックのままでは、根本的な解決にならないことを指揮官は実感していたはずだ。だからこそ、彼は3バックへの回帰を諦めた。そしてリトリートではなくアグレッシブへと方向性を変革したのである。甲府時代には3バックを採用していたわけで、やろうと思えばできたはずである。だが、紫のチームに赴いた指揮官は、3バックを選択しなかった。

 アグレッシブにプレッシングを仕掛け、ボールを失った瞬間にも厳しく相手に圧力をかけて奪い返す。相手陣内で常にボールを動かすことを監督は理想とした。ボール支配率80%を超えるマンチェスター・シティの原点は相手からボールを奪い返す位置の高さだが、極端な話で言えば城福監督の目指すところはそこにある。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング