16歳でプロデビュー、18歳でA代表入り 逸材に立ちはだかった壁「真面目にやりすぎても疲れる」

岡山史上初の日本代表選手が誕生 18歳佐藤龍之介の決意
今季、J1へ初挑戦し奮闘しているファジアーノ岡山に日本代表選手が誕生した。18歳のMF佐藤龍之介が6月シリーズの北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選オーストラリア戦・インドネシア戦に向けた日本代表メンバー入りを果たした。今季、FC東京から岡山へ移籍してきた“新星”アタッカー。U−20日本代表のエースで今年9月のU−20W杯に向けて研鑽を積む。岡山ではウイングバック(WB)を務めるなど新たな挑戦でプレーの幅を広げている。18歳ながら移籍を決断した理由、代表でも共通するポジションへの思いなどを「FOOTBALL ZONE」のインタビューで明かした。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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最も勢いのある若手と言っていいだろう。J1で出場3試合連続ゴールを記録して、4月度のヤングプレーヤー賞を受賞。日本代表にまで上り詰めた佐藤。18歳でのA代表入りはキャリアを築き上げる上で大きな転機となるだろう。だが、ここはゴールではない。FC東京の下部組織で育ち、16歳でプロ契約。順調な成長曲線を辿っているように思えるが、本人にとっては思い描いたスタートではなかった。
「非常に難しい(キャリアの)スタートだった。シンプルに試合に出られなかったし、プロになったことに対して扱いのギャップも感じたので、フラストレーションは溜まっていた」
2023年3月8日、ルヴァンカップ・セレッソ大阪戦において16歳4か月20日でスタメンを勝ち取り、当時のFC東京のクラブ最年少先発出場を果たした。だが、リーグ戦では出番なし。昨季はJ1リーグ3試合の出場にとどまっていた。出場機会を求めて今季から岡山へ。大きな壁を感じていたからだった。
「プロになることでお金ももらう。でも自分の何倍もの給料をもらっている選手とポジションを争わないといけない世界。そういったところでユースからプロになると、全く違う世界だった。サッカーが大きく変わったわけではないので、自分のプレーはそんなに変わらなかったけど、プレーだけじゃない部分も当然関係してくる。真面目にやりすぎても疲れるな、と。適切な評価をすることは大事だと思うので、自己分析したり、客観的に判断してもらったりして(道を)決めていきました」

森保ジャパンと同じ攻撃的WBの挑戦「世界を目指していく中で自分に足りない」
ただ試合に出られなかった時間は無駄ではなかった。自身の課題を洗い出して、1つずつクリアにする。「フィジカル的にもゴールに迫る選手になることが全然できていなかった」と、自身と向き合った。今年4月の出場3試合連続ゴールも「東京では消化できなかったので、溜めて、溜めて、今消化している段階。あそこで頑張っていたから、神様は見てくれていたのかなと思っています」と、成長に繋げている。16歳でプロデビューできたことも今思えば、プラスだった。
「ほかの選手よりも1、2年早く壁にぶち当たれて、移籍もできた。高卒1年目の年で試合に出させてもらえて、そこは自分のキャリアの歩み方としてよかったと思います」
もう1つ。木山隆之監督との出会いは新たな道を切り開くきっかけとなった。負傷者の影響もあったが、ウイングバックで起用されてゴールもマーク。佐藤自身、最初は少し「不安」もあったという。
「“バック”とついているので一瞬不安も感じたけど、今は本当に(抵抗が)全くない。木山監督と出会えたことは本当に大きかった。正直ワイドの選手ではないと思っていたけど、日本代表でも今は攻撃的な選手がウイングバックをやっている。攻撃も守備も全部やれる選手になれれば良いかなと思っている。サイドでの1対1、攻守において負けない。そこにチャレンジしています」
今の日本代表のスタイルと“共通点”を見出し、自らの目標へと変えていた。そして、A代表入りを手繰り寄せた。たとえば、森保ジャパンのMF堂安律やMF中村敬斗も10代の時に当時の長谷川健太監督や宮本恒靖監督からウイングバックを起用されていた時期がある。2人とも共通して当時の経験が「役に立つ」と話していた。「僕が知らなくても(若手時代のWB経験が生きると)いろんな人が話してくれたりもした。世界を目指していく中で自分に足りないところだったと思う」。真摯に「WB」と向き合った結果だ。
クラブ史上初の日本代表選手。その名が歴史に刻まれた。6月5日のオーストラリア戦でAマッチ初出場すれば18歳7か月20日で、歴代4位の年少記録。ゴールすれば史上最年少だ。もちろん、期待は高まる。その周囲の期待を力に変えることができるのが佐藤という18歳の選手だ。自ら開けてきた扉の数々。これからの未来も自らの手で彩ってみせる。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)