浦和レッズの“3年計画”で見えたリアルな姿 リーグVにほど遠き「中位が妥当なチーム」、選手からは戸惑いの声

現実的な順位目標を失うなかで、“良い時期の姿”も失う

 それでも、その4-3-3への変化がチームの中でハマり始めると夏場に好調期が訪れた。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)では決勝トーナメントを勝ち抜き、来年2月の決勝へと駒を進めた。FW松尾佑介、MF小泉佳穂が前線で並んで精度高くプレスのスイッチを入れ、今季の目玉補強だった元スウェーデン代表MFダヴィド・モーベルグもコンディションを上げて好プレーを見せた。あとから振り返ると今季で最高の状態は約1か月だったが、見せたチームのポテンシャルは上位にいく可能性を感じさせるものだった。

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 その後、ユンカーや新加入後すぐに負傷していたFWブライアン・リンセンも起用しながら、特にハイプレス型のチームに対してよりシンプルにプレスの頭を飛び越える攻撃を仕掛けることも模索した。それ自体は昨季からたびたびロドリゲス監督が見せていた采配だが、のちに「ACLのあとは全員が非常に大きな努力をして消耗している状況だったが、そのままその形で続けたほうが良かったかとも思う」と振り返ったように、現実的な順位目標も失うなかで良い時期の姿も失っていった。

 最終節の福岡戦もボールを持つ時間は長かったが、特に今季の前半戦で多く見られたようなチャンスを生み出し切れない試合になった。ロドリゲス監督はこの2年間について「より良くできた可能性も十分にあったかもしれないが、全体的に見れば良くやったと思う」と話したが、それは今季単体で見ても同じようなところはあるだろう。やり方によって多少の上下の振れ幅はあったかもしれないし、もう少し上の順位が見えた可能性はある。だが、トータルして見れば中位が妥当なチームだった。

 すでにロドリゲス監督の退任が発表されているが、その3年計画の発表時により長い目線での目標として恒常的に優勝争いをできるチーム、2030年の時点にはリーグ連覇を成し遂げることも掲げられている。中長期的な目線で見た時のスタート地点としての3年計画は目標を下回ったかもしれないが、ここで全く違う方向性を掲げてリセットし、それに合わせて選手の総入れ替えが必要な状況になれば、それこそ3年計画の策定時に行った強化体制の整理は意味を失う。

 昨季の天皇杯優勝、今季のACL決勝進出が示すように瞬間的な爆発力は証明されている。それを高い位置で安定した力に変えられるのかどうかが成し遂げられなかった課題であり、次に必要なことと言えるだろう。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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