『おでんくん』が結んだ縁と“夢中”で駆け抜けた400試合 リリー・フランキー×森重真人対談【前編】

欧州選手権の熱狂に「いま自分は何かに夢中になれているか」

リリー 今年の6月から7月にかけて1カ月ちょっとイングランドにいたんです。その時、欧州選手権が開催されていて、一緒に仕事をしていた周りのスタッフはイングランドの50年ぶりの決勝進出の話で持ちきりでした。俺もイングランド人じゃないのに、決勝戦の前は「頼むからイングランド優勝してくれ」って強く願っていました。「もし負けたら、次の日あいつらがブルーな顔して現場に来ることになるだろうから(笑)」。でも、負けたら負けたで彼らも、なかなか素敵だなって思いましたよ。翌日、「安心したよ、イングランドは勝ち慣れていないから負けてくれてホッとしたよ。勝ったら大変なことになっていただろうからね」って。だから、この人たちは本当に生活の中にサッカーがあるんだなって思いました。スポーツでも何でもそうですが、人生で夢中になれるものがあることは幸せなことだなって思いましたね、その人たちを見ていて。

森重 リリーさんは今、仕事以外に夢中になっていることはありますか?

リリー 昨年や今年のコロナ禍で、「はたして何かに夢中になれているのかな」と考えたんです。ふと一つの仕事が終わって立ち止まって考えると、空虚な気持ちになっている自分がいるんです。一つひとつの仕事にはコミットしているつもりですが、森重さんもシーズンが終わった時に同じようなことを感じますか? 毎日、その熱量を持って生活できているのかなって。去年から今年にかけて、オレってそんな風に自分の人生を考えたことが本当になかったんだなって思いました。

森重 ちょっと意外です。常にそういうことを考えながら生きている方だと思っていたので。仕事が好きだからこそ、夢中になれているんだとは思うんです。それがなくなるってなると……。でも、僕もこのコロナ禍で、サッカーができなくなった時に、自分にはサッカー以外の何も残らないという恐怖を抱きました。人としてもっとできることを増やしたいと、この1、2年で強く感じました。サッカー以外のこともどんどんチャレンジしていきたいし、1人の男としてもっと自分の世界を広げるために学びたいと思いました。

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