“新旧”名ボランチの思考、「判断力」が勝負を分けた瞬間とは? 福西崇史×山口蛍対談【前編】

ヴィッセル神戸で活躍するMF山口蛍【写真:Getty Images】
ヴィッセル神戸で活躍するMF山口蛍【写真:Getty Images】

【月間表彰】6月の「月間ベストアグレッシブプレーヤー」に“神戸の心臓”MF山口蛍を選出

「DAZN」のパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」では、各月ごとに各部門の表彰を実施している。「Football ZONE web」では、現役時代に強靭なフィジカルと戦術眼を武器に日本代表としても活躍した福西崇史氏に、その月に最もアグレッシブなプレーを見せた選手を選出してもらっている。

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 福西氏が6月度の「月間ベストアグレッシブプレーヤー」に選出したのは、ヴィッセル神戸に所属するMF山口蛍だ。6月のJ1リーグ戦で2連勝を飾ったが、なかでも横浜FC戦では5-0の圧勝劇を見せた。この試合ではハットトリックを達成したFW古橋亨梧(7月16日にセルティック移籍が正式決定)にスポットライトが当たったが、福西氏は中盤の一角を務める山口のプレーに注目した。そして横浜FC戦から3つのプレーをピックアップし、山口がどのような判断をしていたか、深く掘り下げていった。

 また、かつて世界的名手である元ブラジル代表MFドゥンガ氏とプレーした福西氏と元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタとともにプレーしている山口が、世界的な名手がチームにいる効果、今後の神戸の“伸びしろ”についてもたっぷりと語り合っている。

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――今回、福西崇史さんが選出する6月の最もアグレッシブなプレーをした選手に山口蛍選手が選出されました。まずは「ベストアグレッシブ賞」に選出された感想をお聞かせください。

山口 意識はしていなかったのですが、選んでもらえて、すごく嬉しいです。

福西 神戸が5-0で勝利した第19節の横浜FC戦で、アグレッシブさが際立っていたシーンがいくつかありましたが、まずは前半34分の3点目のシーンです。左サイドでイニエスタ選手からパスを受けた山口選手が、一度、MFセルジ・サンペール選手にボールを預けてリターンパスをもらって、ゴール前に走りこんだ古橋選手にラストパスを送ったシーンです。サンペール選手からパスが来た時というのは、中が見えていたのでしょうか?

山口 はい。見えていました。アンドレスから来る前に、チラッと見ていて、その時にセルジがサポートに来ていたのが見えていました。もし、相手が来なかったら、自分で前を向こうかなと思ったのですが、間接視野で相手がちょっと寄ってきていたので、ワンタッチでパスを出せば、ワンツーで抜け出せるなと思いました。

福西 相手も見ながら状況判断ができているのだろうなということで、このプレーを選出させてもらったのですが、相手も見ながら、その状況に合わせたプレーをすることは、いつも考えているのでしょうか?

山口 そうですね。最近、ポジションがダブルボランチではなくて、中盤がダイヤモンドになる形が多いのですが、そのポジションで、前目でプレーしている時は、そういうことも意識しながらやっています。このシーンは自分でもよく見えていたなっていうくらい、相手の動きも含めて全部が見えていました。

福西 この場面で凄いなと思ったもう一つの理由が、自分でシュートを打って点を取りに行くこともできたと思うんです。

山口 それもできたと思います。でも、結構、僕は自分が点を取ることよりも、それよりも確実なほうを選ぶクセがあるんです。この場面のように、どちらでも選べる時は、基本的により確実なほうを狙うことが多いです。

福西 なるほど。この攻撃はイニエスタ選手がスローインを受けたところから始まっていますが、イニエスタ選手のボールを受けてからのちょっとした間、そしてアウトサイドにかけて出したパスもあったと思いますが、このパスからメッセージも伝わってきていましたか?

山口 そうですね。大体、ボールを持った時に、いつも顔を出すのですが、結構、いつもパスを出してくれるんです。当てて、潜り込んできてというシーンが多くて、このシーンはたまたま最初は相手と被っていたので、アンドレスもちょっと時間を作ってくれたので、僕もそれに合わせて動いたんです。そのタメを作れる選手は、アンドレスくらいしかいないかなというくらい、結構凄い技術だと思います。

福西 それを山口選手も理解していて、イニエスタ選手がボールを持った時間で、体をターンさせました。それで周囲を見られたとも思いますが、かなり細かい駆け引きが高いレベルで行われていますよね。

山口 練習の時から、こういう当ててくるシーンは多いんです。最初に神戸に移籍して来た頃は、パスを受けるタイミングとか、ワンツーを仕掛けるタイミングを含めて、掴むのが難しかったですね。当時は、結構、合わないことも多くて「申し訳ないな」というのが、試合でも、練習でも思っていて、それが試合や練習をこなすことで、だんだん合うようになっていきました。そうすると結構、狭いエリアでもパスを付けて来ることが多くなってきて、そこは信頼してくれている証なのかなと、感じられるようにもなってきています。そこは練習からやってきたことが、そのまま出たかなと思います。

福西 本当に、全員のイメージが一致している完璧な崩しという感じですよね。

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