リバプールの“連覇消滅”を感じた瞬間 「史上最強の肉体を持つ男」の悲劇が招いた崩壊

リバプールが今季、苦難を強いられている【写真:Getty Images】
リバプールが今季、苦難を強いられている【写真:Getty Images】

【イングランド発コラム】マンCに完敗、リバプールDFが示した苛立ちが象徴する“終戦”

 2月7日、プレミアリーグ2連覇へ一縷の望みを抱いて臨んだマンチェスター・シティとのホームゲーム。リバプールファンにとっては久しぶりに元マンチェスター・ユナイテッド主将ギャリー・ネビルの実況解説が“煩わしい”と感じる試合になった。直近の2シーズンはリバプールが圧倒的な強さを発揮したことで、ネビルは苦虫を噛み潰したような顔をしながら大嫌いなレッズを褒めるしかなかった。

 ところが、だ。確かにGKアリソンの信じられないような致命的なミスも一度ならず二度あったが、シティが後半に今季の優勝を宣言するようなゴールラッシュを見せると、宿敵ユナイテッドOBの中でもひと際“アンチ・リバプール”で知られるネビルの声が、久しぶりに生き生きとした。

 けれども完敗。いや、ホームで3点差負け(1-4)は大敗と言っていいだろう。

 象徴的なシーンは後半39分。シティのMFフィル・フォーデンが完璧なインディビジュアル・ゴール(個の力によるゴール)を決めた1分後に、リバプールDFトレント・アレクサンダー=アーノルドが、おそらくシティDFジョアン・カンセロだったと思うが、後ろからドンと突き飛ばし反則を取られた直後、“何をする”と振り向いた相手に“何が悪い”とばかりに仁王立ちして、八つ当たりとも言える行為で負け試合の悔しさを表した。その場面を見て、リバプールの2連覇は完全に消滅したと感じた。

 話がガラッと変わって恐縮だが、僕は元々サブカルチャーの取材をするライターで、今もいくつかのファッション雑誌との付き合いがある。英国の超高級品を扱うことが多かった。昭和天皇や白洲次郎がスーツを作った、「背広」の語源で有名なサヴィル・ロウの高級テーラーや手作りの注文靴ブランドの記事を手がけ、英国の有名店はすべて回っている。

 その中の一つに『ガジアーノ&ガーリング』という高級靴ブランドがある。工場に行くと、アレックス・ファーガソン監督がオーダーした注文靴があったこともよく覚えているが、そこで創立者デザイナーのトニー・ガジアーノ氏を取材し、印象に残った話がある。

 質問は「高級靴を作る秘訣は?」というなんとも単直で浅はかなものだった。するとガジアーノ氏は少し困ったような顔をして、「高級靴を作るのに特別な魔法はありません。靴作りの工程はどこも同じです。ただし素材の最高級の革はとてもデリケートなもので、すべての工程で他より少しずつ手間をかけて、丁寧な仕事をしなければなりません。その小さな積み重ねが仕上がりで大きな差を生むのだと思います」と答えた。

 結局、サッカーのチームも同じだと思う。超高級品の革靴と同じく、強いチームは無数の小さな努力を丁寧に積み重ねて、最終的に大きなクオリティーの差を創造するのだ。

森 昌利

1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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