リバプールの“連覇消滅”を感じた瞬間 「史上最強の肉体を持つ男」の悲劇が招いた崩壊

無観客のアンフィールドの様子【写真:AP】
無観客のアンフィールドの様子【写真:AP】

無観客のアンフィールドが選手にもたらした影響

 幸いなことに黄金の3トップは健在だが、これだけ後方のパワーバランスが崩れてしまい、チームの意識が守りに傾いてしまうと、前に出るスピードが半減し、昨季までの電光石火の攻撃が影を潜め、なかなか決定機が生まれない。

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 こうした悪循環の根源のすべてはファン・ダイクの不在だ。

 さらにもう一つだけ今季リバプールの不振の大きな要因を上げると、それは無観客試合となる。

 サポーターは12人目の選手というたとえもあるが、アンフィールドに集結するリバプールのサポーターが創出する熱狂的な応援はまさにプレミア随一。その熱狂がクロップの熱い人間性に呼応し、選手を鼓舞し、集中させ、とんでもない高レベルのパフォーマンスを呼び込んだ。

 それが今季はご存知の通り、熱狂ゼロのスタジアムで試合が行われている。新型コロナウイルスによるロックダウンの影響で取材制限が厳しく、テレビ以外のメディアはなかなか取材申請が通らない状況が続いているが、それでもカップ戦を含めて4試合の取材をした。そして無観客のスタジアムで行われたフットボールは、記者にとっても“アドレナリンが湧き出るものではない”と感じた。

 とすれば、選手にとってはどれほどの影響があるのだろうか。しかもリバプールのサポーターは、これは大袈裟ではなく”俺たちの人生がかかっている”という応援をする。あの応援があればこそ、リバプールの選手は己のすべてをピッチ上に捧げることができるのだ。

 守護神ファン・ダイクの不在に加えて、アンフィールドを真っ赤に染めるサポーターの不在。この2つの不在が今季のリバプール不振の最大の理由であることは疑いようもない。
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(森 昌利 / Masatoshi Mori)



森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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