リバプールの“連覇消滅”を感じた瞬間 「史上最強の肉体を持つ男」の悲劇が招いた崩壊

吉田麻也の個人トレーナーが絶賛、ファン・ダイクの“強くて柔らかい肉体”

 これは余談ではあるが、吉田麻也(現サンプドリア)の個人トレーナーで“足で踏む”特殊なマッサージを施す木谷将志氏を、2019年の年末にインタビューした。この時、木谷氏はサウサンプトンに在籍していたファン・ダイクを治療したエピソードを明かしてくれた。

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 木谷氏の治療は「不思議なほど痛みがなくなる」とプレミア内でも評判を呼び、後にサウサンプトンの選手をはじめ、数多くのプロサッカー選手の肉体に触れることになるのだが、その中でもファン・ダイクの肉体が「史上最強」と断言した。さらに「強いが同時に柔らかい。良い筋肉だけが集約したような体」とその最強のディテールを語って、オランダ人の肉体を絶賛したのだ。

 2019年にリオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドと並んで、バロンドール候補の最後の3人に残ったことでも明らかだが、木谷氏曰く「史上最強の肉体を持ったオランダ人」が現在世界一のDFであることに異論を挟むものは少ないだろう。

 そんな選手が欠ければ、チームの強度とクオリティーが下がるのは当然だ。しかもファン・ダイクは人並み外れた肉体と身体能力を持ちながら、最終ラインを統率するリーダーシップにも長けている。

 昨季、リバプールの両サイドバックは右のアレクサンダー=アーノルドが「13」、そして左のアンドリュー・ロバートソンが「12」という驚異的なアシスト数を記録した。しかし今季は、折り返し地点を5試合越えた24試合を消化した段階で、アレクサンダー=アーノルドが「3」、ロバートソンが「5」と伸び悩んでいる。これも攻守の切り替えのタイミングを最終ラインの中央から指示していたファン・ダイク不在の影響と見る。

 つまり、アリソンの前に立ちはだかる世界最強のセンターバックが不在となったせいで、守りが弱くなっただけではなく、昨季まで攻撃の起点だった両サイドバックが思い切って前に踏み込むシーンが激減した原因にもなっている。

 しかしそんな大黒柱の不在も、エバートン戦直後から12月半ばにかけての2カ月の間は、リバプールがディフェンディング・チャンピオンとしての意地を見せて、なんとか踏ん張った。ところが超人的な存在だったファン・ダイクに続き、センターバック(CB)のレギュラーであるイングランド代表DFジョー・ゴメスも、オランダ代表DFの後を追うように膝の靭帯を損傷して今季中の復帰が絶望となり、さらには控え一番手のCBであるカメルーン代表DFジョエル・マティプも故障がちでまともに出場できないコンディションが続いた後、2月になって足首の靭帯損傷で今季中の復帰が絶望となった。

 守備の要であるCBのレギュラーと控えの3人が完全に戦線離脱をして、中盤のファビーニョ、そして主将ジョーダン・ヘンダーソンの2人が最終ラインに下がり、結局これでチームのバランスが完全に崩れてしまうことになる。

森 昌利

もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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