南野拓実の電撃移籍は「理屈に合う」 クロップ監督の言葉から読み解く冷遇の真意

南野にとって影響が大きかったファン・ダイクの負傷離脱

 しかし、結果は真逆となった。あのクリスタル・パレス戦の活躍は全く無意味だったのかと思ってしまうほど、南野の出番は減少した。

 あの7ゴール大勝後の公式戦9試合で、日本人アタッカーが先発したのは、新型コロナウイルスの集団感染が発生してユースチームを送り出すしかなかったアストン・ビラとのFAカップ4回戦だけ。リーグ戦はバーンリー戦の後半39分から出場したのみで、後半アディショナルタイムの4分間を合わせてもわずか10分間のプレーに留まっている。

「例えばセットプレーだ。ここでは単純にサイズ(身長)が問題だ。うちのディフェンスはただでさえ高さが足りない。そこにタクミを送り出すのか? セットプレーの守りは非常に重要だ。メディアはそれほど注目しないが、この守りが勝敗を分ける」

 クロップ監督のこの言葉を聞いて、クリスタル・パレス戦後の南野の出番減少の理由が氷解した。結局、今季のリバプールの不振、そして南野の期限付き移籍も、すべては守りの大黒柱であるオランダ代表DFフィルジル・ファン・ダイクの不在に帰結してしまうのだ。

 GKアリソンとともに、悲願のプレミア優勝の最後のピースだった守護神の不在で、セットプレーが今季のリバプールの弱点になっていることは一目瞭然だ。あの強靭な肉体を持ち、チームを鼓舞して守りを組織するファン・ダイクがいなくなり、リバプールはセットプレーに対する高さも強さもまとまりも失ってしまった。

 しかも守りだけではなく、味方のCKやFKで攻める場面でも、ポイントゲッターだったオランダ代表DFの不在が大きく響いている。

 さらにイングランド代表DFジョー・ゴメスも膝の靭帯損傷で今季絶望。そしてカメルーン代表DFジョエル・マティプも故障がちで満足な活躍ができない。こうしてレギュラーのセンターバックが総崩れとなり、弱点となったセットプレーの守りを南野の起用でさらに弱体化させるわけにはいかない。

 クリスタル・パレス戦で南野がプレミアでも通用する力を見せたにもかかわらず、ドイツ人闘将がディボック・オリギやプレミア経験値の高いジェルダン・シャキリを優先起用した舞台裏にはそんな理由があったのだ。

森 昌利

1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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