マジョルカ在住記者が追った「久保建英の1年」 同僚との“雑談”に見えた日本人離れした能力

DFババ・ラーマン(写真右)と談笑する久保建英【写真:島田徹】
DFババ・ラーマン(写真右)と談笑する久保建英【写真:島田徹】

【スペイン発コラム】ピッチ外で傑出していた、語学力だけではないコミュニケーション能力の高さ

 日本代表MF久保建英にとって、レンタル移籍したマジョルカでの1シーズンはどういうものだったのか。練習から試合まで、その1年を現地で追い続けた記者が垣間見たものとは――。

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 今季が久保にとって、「成長の1年」になったのは間違いない。チームを1部残留へ導くことこそできなかったものの、18歳で加入した初めての欧州トップレベルでの1年を通じて試合に出場し、終盤には攻撃陣の軸としてチームを引っ張ったこと自体が、すでに偉業の域に達していると言える。ここでは試合前やピッチ外、特にコミュニケーション面での久保の“戦いぶり”に注目して振り返ってみたい。

 まずは語学能力。久保が11歳から5年間をバルセロナで過ごしスペイン語をマスターしているのはよく知られている。多くのチームメートや監督らがその語学力を称賛しているし、実際に記者会見などでの発言は文法、語彙力、表現力といずれも非常にレベルの高いものだ。スペイン語を母国語とする選手でさえマイクを前に理路整然と、細かなニュアンスを含めて自分の意思を適切に表現できる者は必ずしも多くない。

 しかし話はここで終わらない。むしろここからがより重要なのだが、久保は練習前の雑談の段階で自ら積極的にチームメートに声をかけ、自分で話題を回す試みを続けてきた。

 マジョルカでの加入初日こそチーム最年長で主将のDFシスコ・カンポスに付き添われて様々なレクチャーを受けていたが、その後はスペイン語圏の選手だけに止まらず同時期に入団したMFヤニス・サリビュル(フランス)やFWアレクサンダル・トライコフスキ(北マケドニア)、DFルーマー・アグベニュー(ガーナ)といったメンバーと話し込む場面が、ほぼ毎回見られた。

 今年2月に加入したMFキ・ソンヨン(6月末に退団/現FCソウル)とも練習初日に並走しながら、英語でやりとりしたと自身が明かしている。リーグ中断期間を経て無観客で試合が再開されたことで、久保が出場時間を通じて仲間にパスを要求し、コーチングを続ける姿勢が明らかになったが、その素地はこのあたりからあったのだ。

 この点については、もしかすると純然たるサッカーの技術や戦術そのものより、大事なことではないかと筆者は考えている。

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島田 徹

1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。

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