“失明危機”DF、クラブW杯出場チームに移籍し衝撃の経験 「槍で一突きされる覚悟を…」

昨年12月に開催されたFIFAクラブW杯に日本人として唯一の出場(画像右)【写真提供:11aside】
昨年12月に開催されたFIFAクラブW杯に日本人として唯一の出場(画像右)【写真提供:11aside】

藁のホテル、住民の職業は「狩り」、街灯にスーパーもなし 「ほんまにこんなチームで…」

 そんななか、クラブW杯出場のためにハミルトン・ワンダラーズから期限付き移籍したヤンゲンは衝撃的だった。ヌメア国際空港から車で約7時間。街灯はなく、スーパーもない。案内されたホテルは“藁”でできていた。チームメートの職業は「狩り」だという。

「ヤンゲンは奥のほうだと危険。村長にお土産を渡して2時間儀式を受けないと入れなかったり、槍を普通に持っている人がいたりする。僕も『槍で一突きされる覚悟はしてください』と言われました。他の人の家には鹿が逆さになって吊るされていて、生きているものすべて(狩る)。(スーパーがなくて)買いにいけないですからね、狩りに行くので(笑)。僕のホテルは藁でできていてテレビとかないですけど、お湯も出たしご飯も出てきたので割と快適でしたよ」

 だが、実際に練習でも想定外のことばかりが起きた。同じ時間帯に行われるものの、違う町や村の3カ所に分かれる形式で、松本は監督が指揮を執る練習には参加できなかった。毎日8人程度の選手が集まるものの、中には素人も混じっているという。

「練習するとなってもチームの選手がほとんどいない。全然関係ないおじさんとか子供もいて、監督ももちろんいない。同じ時間に別々の場所で練習して、試合だけ集まる。大阪、東京、名古屋みたいな感じですね。ほんまにこんなチームで勝てるんかなあ、って思っていたら、実際クラブW杯では全然違うチームで割と戦えた」

 監督とはクラブW杯に出場するために、カタールへ向かう空港で初めて会った。中には飛行機に乗ったことがない選手もいて、周囲はカタールに着いてからエスカレーターに「階段が動いている!」と驚いていたという。そんな選手たちのためにも、松本は日本からスパイクを送ってもらうなどして、懸命にサポート。プロ選手は松本だけ。大会では歴史的な1勝を目指してチームメートを集め、思いを伝えた。

「『カタールに来たからにはプロと一緒。プロは時間を守らないといけない。まずはしっかり時間を守ろう』と伝えました。そうしたら、みんな次の日は集合時間の2時間前から待っていた(笑)。そこはちょっとでいいんですけど、本当に素直なんですよね」

 チームに来て間もなかったが、リーダーシップを執る松本に対して同僚はなんでも吸収しようとした。だが、試合前日、その松本が先発から外れることが分かった。すると、深夜2時頃にもかかわらず選手だけで“緊急”ミーティングが開かれ、監督へ直談判する選手もいたという。

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