「日本の練習は長すぎる」 メキシコ在住コーチが語る、両国の育成環境の違いとは?

下部組織の選手は練習後、栄養士が献立を考えたメニューの食事をとっている【写真:福岡吉央】
下部組織の選手は練習後、栄養士が献立を考えたメニューの食事をとっている【写真:福岡吉央】

育成年代から徹底した栄養管理 メキシコの選手は「胸板が厚く、お尻も大きい」

 栄養面に関しては、栄養士が管理している。メキシコでは学校が午前のみ、午後のみというケースが多く、給食の制度もない。しかもタコスなどの国民食は炭水化物が多く、脂っこいものも多い。飲み物も水ではなく、炭酸飲料や砂糖入りの甘いジュースを飲む習慣があり、今では世界有数の肥満大国として知られる。そのため、栄養士はアスリートとしての体づくりのため、バランスの良い食事をとることの大切さを選手たちに若いうちから植え付けている。

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 練習後には、フルーツやプロテインが用意され、栄養士が献立を考えたメニューを食堂で食べてから帰ることもある。遠征時には栄養士が考えたメニューを、遠征先のホテルのレストランに依頼する。試合の前日は鶏や魚、茹で野菜などのサラダ、スープ、パスタかご飯。試合当日の朝はホットケーキやフルーツで、長期的な体づくりの視点から、試合前にも肉を食べるのだという。

 塩沢氏は「U-20の選手たちは、だいたいがU-15、U-17を経験しているので、ホテルでの振る舞いやバランス良く食べるといったことは自然と身についてくる」と明かす。給田氏も「メキシコはよく日本と身長や体型が似ていると言われますが、こっちの選手のほうが胸板が厚く、お尻も大きい。筋肉もあり、フィジカルが強い。食べて運動して筋トレしてプロテインを飲めば、2時間の練習でもああいう体型になる」と話す。食生活が改善できず、減量できない選手には個別のトレーニングが与えられ、それでも改善の兆しが見られない時は試合にも出してもらえないのだという。

 こうした環境の中で、現地指導者の海外進出の必要性を指摘しているのが、メキシコ在住10年目で、現在U-23メキシコ代表コーチを務める西村氏だ。

「メキシコは選手はたくさん海外に出始めましたが、指導者はまだ少ない。でも、海外で違うことを学んで選択肢の幅を持たすとか、練習の引き出し、コーチングのポイントなど、別の視点がもう少し入ると選手たちにとってプラスになる。そこそこの練習をしていて、これだけ良い選手が次々と出てくるんだから、もっと良い練習をすれば可能性も広がる。メキシコ人はテクニックのある選手がほとんどだし、フィジカル的にも高い能力を持っているので、もう少し小さい時からしっかり準備を積み重ねたら、もっと強くなって、もっと世界で戦える可能性がある」

 西村氏がこう話すのは、メキシコ人選手には“ずる賢さ”があるからだという。

「メキシコでは指導者が1人の選手に時間をかけることはあまりない。でも、情熱や時間をかけて個人の映像編集や分析をしたり、アドバイスを送ってあげると、選手はそれまでそうされた経験がないから耳を傾ける。メキシコ人は自分に役立つもの、有利になるものは上手く取り込もうとするので、この指導者は役に立つな、上手くさせてくれるなと思わせればこっちのもの。選手はついてきてくれるんです」

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