南野拓実を導く“アンフィールドの魔法” 「思い込んだら命がけ」のリバプール人気質とは?

リバプールのホーム、アンフィールドのサポーター【写真:Getty Images】
リバプールのホーム、アンフィールドのサポーター【写真:Getty Images】

港湾都市が生んだエネルギッシュなスピリットと固い結束

 イングランド北西部に位置するリバプール。ロンドンからは約350キロ離れた港湾都市で、世界的なバンド「ビートルズ」の故郷としても名高い。

 しかしこの街の住人とは、どんな人たちなのか。それは日本では、あまり知られていないのではないか。

 リバプール人は通常「Liverpudlian」(リバプッドリィアン)と呼ばれるが、身内同士では「scause」(スキャウス)と呼び合う。このスキャウスの語源を探ると、リバプール人の気性の根元にも触れることになると思う。

 もともとは小さな漁港だったリバプールだが、18世紀になると国際的な商港となった。イングランド北西部からアイルランドを右手に見て南下し、大西洋に抜けることのできる地の利が功を奏したのだ。それでヨーロッパとアフリカ、アメリカを結ぶ三角貿易で栄えることになった。

 19世紀になり、この頃から急速に発展したリバプールには世界各地から船乗りが集まるようになった。その中には北欧スカンジナビア半島からやってきた船乗りも大勢いて、彼らが後にリバプールの名物料理となる「スキャウス・シチュー」を持ち込んだという。

 このシチューが「スキャウス」の語源である。

 現在、リバプールでスキャウス・シチューと呼ばれる典型的なものは、スネ肉等の安価な牛肉と、ジャガイモやニンジン、玉ねぎといった、どこの家庭でも見かけるありきたりの野菜を放り込んで作るビーフシチューだが、本来材料は肉でも魚でもなんでも良い。

 もともと物資に限りがある船内で作られたごった煮的なシチューで、そのあり合わせや残り物で作る料理が、リバプール以外のイギリス人からすると、独特の金銭感覚(要するにケチなのだが)を有し、身内意識が強く、やや排他的なところもあるリバプッドリィアンを象徴するのだ。

 だから他の土地の人間が、リバプール人を“スキャウス”と呼ぶ場合、「ケチ臭くて少し変わったごった煮のような奴ら」という、多少の揶揄も含まれていると思う。

 しかし気取ったことが大嫌いで、率直なスキャウスは、そんなことにはお構いなしだ。結局この世はなんでもあり。地理的にもアイルランドやスコットランド、そしてウェールズとの交差点となり、ケルト民族が多くなだれ込んで来たことで、その頑なで感情的で“思い込んだら命がけ”というロマンティックな気質もリバプールに根付いた。

 その上、異邦人がまみえる港街特有のコスモポリタンな空気も充満した街で、ここで生まれ育った人間なら「どうせこの世はなんでもあり。なんでもかんでも放り込んで煮込んでしまえ」とばかりに開き直り、スキャウスであることを誇りにする。

 そんな港湾都市のエネルギッシュなスピリットと、固い結束がリバプールのサポートを特別にするのだ。

森 昌利

1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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