南野拓実を導く“アンフィールドの魔法” 「思い込んだら命がけ」のリバプール人気質とは?

FA杯ではカーティス・ジョーンズ含め、控え選手が主に出場【写真:Getty Images】
FA杯ではカーティス・ジョーンズ含め、控え選手が主に出場【写真:Getty Images】

控え中心のリバプール、ベストメンバーのエバートンに1-0勝利

 一方、クロップ監督がカタール遠征も挟んで連戦に次ぐ連戦を重ねた主力を、このFAカップのエバートン戦で休ませたいと思うのは当然だった。

 運命のいたずらにより、この試合が意地と誇りをかけた伝統のマージーサイドダービーになってしまったが、クロップ監督は予想以上に思い切ったターンオーバーを実施し、メンバーを一新した。

 3日前のシェフィールド・U戦のスタメンから起用されたのは、なんとセンターバックのDFジョー・ゴメスだけだった。そこに10代の3選手を含む5人のユース選手と4人の控え選手、そして1月1日に正式にリバプールに加入したばかりの南野を加えた先発イレブンを送り出した。

 対するエバートンは、リーグ戦と変わらぬベストメンバーだ。

 リバプールが前回戦ったカップ戦は12月17日に行われたリーグカップ準々決勝だった。翌18日にクラブW杯準決勝と日程が重なったことで大問題にもなったが、結局クロップ監督は苦渋の選択をして、全員ユース選手というチームを送り出すしかなかった。しかも、この試合前日にドイツ人闘将は一軍メンバーとともにカタールへ飛び立っており、タッチライン上にその姿はなかった。そんな状況で行われたアストン・ビラとのアウェー戦に、リバプールは0-5と大敗している。

 それに比べれば、確かにエバートン戦の先発も控え中心とはいえ、南野を含めた一軍メンバーが6人入っており、リーグカップ準々決勝以上の試合が期待できる形にはなっていた。しかし相手のエバートンは、本気も本気のスタメン。クオリティー的にも先日のアストン・ビラを凌駕していた。

 またカルロ・アンチェロッティ新監督が就任して初のダービーということ。それに来季のUEFAヨーロッパリーグ出場権が獲得できるFAカップ優勝は、リーグ戦中位のエバートンのほうにとってさらに重要。そして現実的に獲得のチャンスがあるメジャートロフィーという点でも、この大会はエバートンのほうに勝ち残る意義がある。

 しかし結果は、ユースと控えと新加入選手を送り出したリバプールの1-0勝利となった。そしてその最大の勝因は、筆者の心に最も響いた南野のコメントにもしっかりと刻まれていた。

 繰り返すが、それは日本人アタッカーが「サッカー選手としてこれ以上ない」と断言したアンフィールドの雰囲気――すなわちサポーターの声援にある。

 昨季もUEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝第2戦で、バルセロナを相手に4-0の勝利を記録し、奇跡のCL決勝進出を果たした。相手には「魔物がいる」とも言われるアンフィールドだが、現場の雰囲気はまさに電撃的と言うしかない。しかしなぜここまで、サポーターが選手の心を動かすほどの力をスタンドから送ることができるのだろうか。

 この先は「世界で最も熱い」と言われるリバプールサポーターについて記述してみたい。

森 昌利

1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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