鎌田大地、フランクフルト新攻撃陣での“生きる道” 幻ゴールに見た「トップ下の理想像」

フランクフルトFW2人、バス・ドスト(左)とアンドレ・シウバ【写真:Getty Images】
フランクフルトFW2人、バス・ドスト(左)とアンドレ・シウバ【写真:Getty Images】

現チームでのトップ下の役割は「アシストというよりも、その一個前」

 アーセナル戦を全体的に振り返ってみると、鎌田からのパスやドリブルがチャンスに直接つながった場面は、普段ほど多くはなかったかもしれない。ただ、そこには前線の2人の得点力を生かすために、フランクフルトの攻撃のあり方自体が少し変更されている点が要因の一つに挙げられる。

 鎌田は自身の役割について、このように語っている。

「僕が今担っているのはアシストというよりも、そのアシストの一個前(のプレー)。僕から(MFフィリップ・)コスティッチだったり、上手くサイドに展開して(そこで)コスティッチが相手を上手く剥がしたりとか。前にもシュートが上手い選手がいっぱいいるので、上手くサイド攻撃だったりというのをやっている」

 つまり、攻撃時にはトップ下の鎌田が経由地点となることで、サイド攻撃のバリエーションと精度を高め、そこで起点を作ることで前線2人の得点力を最大限に生かそうとしていることになる。実際に試合では、鎌田が間に入ることで攻撃がスムーズに回り、そこからスピードアップするシーンがいくつもあった。チームにとって、鎌田が重要な役割を担っているのは間違いない。

 そして、そこで仕事が終わりなわけではない。シュートシーンの場面のように、パスをはたいてからボールをもらい直すために、ペナルティーエリア内にタイミング良く入っていく動きもまた求められている。鎌田も、そのことはしっかりと自覚している。

「僕自身、もっと上手くゴール前に入っていって自分自身のチャンスも増やさないとダメだと思う。自分が上手くドリブルで剥がしてシュートだったりとか、まだまだ成長できるところはある。やっていかないとダメかなと思いますね。今のプレー内容は悪くないと思うので、あとは得点が1点でも取れれば、もっといい形に変わっていくと思うので、そこだけという感じですね」

 お互いの動きを把握し合い、馴染んでくれば、そのあたりはもっとスムーズにいくようになるだろう。相手DFの意識がシウバとドストに集中している隙を突き、2列目から上手くスペースに飛び出し、そこでパスを呼び込むことができれば、得点チャンスにもっと関わっていけるはずだ。

中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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