“速くて上手い”食野は「ハーツの希望」 英初ゴールに重なる若き日のルーニーの姿
デビュー2戦目のマザーウェル戦、途中出場からスコットランド初ゴールを記録
「ここは行くでしょ!」
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それがスコットランド1部ハート・オブ・ミドロシアン(ハーツ)に今夏加入した食野亮太郎の、英国初ゴールを決める瞬間に頭に浮かんだ“思考”だった。しかし傍から見ているものからしたら、正直「ここで行ける」という状況ではなかった。
現地時間14日にホームで行われたリーグ第5節マザーウェル戦。ハーツは前半20分にコーナーキックから先制点を決められ、後半7分にはバックパスがそのまま相手の快足ウインガーに渡って、オウンゴールならぬ“オウンアシスト”で2失点目を喫した。
その後、ハーツも後半16分に1点を返す。起点になったのは、その5分前から途中出場していた食野だった。相手ボックス内右サイドでスルーパスを右足で受け、鋭い切り返しを決めて相手DFを振り切り、返す刀とばかりに左足で放ったオンターゲットシュート。相手GKがなんとかブロックしたが、そのクリアボールがふわりとゴール前に舞い上がり、最後はハーツの巨漢FWウチェ・イクペアズが頭で押し込んだ。
本拠地は一気に反撃ムードに包まれた。しかし5分後、MFシーン・クレアの緩慢な守備対応から相手FWにボールをひったくられ、3点目を決められてしまった。
スコアは1-3。しかもすでに3人の交代枠を使い果たしていたハーツは終盤に負傷者を1人出し、10人での戦いを強いられた。もちろん、リードしている相手は逃げ切りを図り、後ろに人数を割いている。
ところがそんな数的不利の状況で、敗色濃厚となって迎えた後半41分、食野は“ここは行くでしょ”と、1点を返したらまだ試合の行方は分からないとばかりに、闘志むき出しのプレーで相手ゴールへと向かったのだ。
それではゴールシーンを振り返ってみたい。起点は味方のMFグレン・ウィーランが、後ろ向きながらバックヘッドで相手のクリアを押し返したボール。それが幸運にもゴールを背にした食野の足もとへ落ちた。ゴール正面30メートル付近の典型的なトップ下の位置。絶妙なファーストタッチでボールを足もとに収めると、そのまま右に素早くターン。すかさず右前方にいたMFジェイク・マルラニーと鋭いワンツーを決めて、さらにドリブルで前進した。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。