現地スペインと「久保建英フィーバー」 レアルB選手への“異常”で前例なき注目度の高さ

レアル・マドリードの日本代表MF久保建英【写真:Yukihito Taguchi】
レアル・マドリードの日本代表MF久保建英【写真:Yukihito Taguchi】

【スペイン発コラム】連日報じられる「KUBO」の名前 ショップでは久保のユニフォームがトップチーム選手と並ぶ

 レアル・マドリードが6月に日本代表MF久保建英のカスティージャ(Bチーム)加入を発表して以降、18歳アタッカーへの注目度が日々高まっていく報道をスペイン国内で見ていると、最初は“驚き”と“違和感”しかなかった。なぜなら、これまでにもスペインでは数多くの日本人選手がプレーしてきたが、こんなにも連日1人の日本人選手の名前がスペインメディアに出続け、その将来を占われることなど、一度もなかったからだ。こうした「KUBO」ブームは一過性のものかと思われたが、トップチーム帯同から約1カ月が経過した今、その期待はスペイン国内でも止まるところを知らないという印象を受けており、少なくとも“一つの結果”が出る8月17日のリーガ・エスパニョーラ開幕戦(セルタ戦)までは続くと思われる。

 久保はこの1カ月の間に、スペインで権威あるスポーツ紙の一面を飾った初の日本人選手になった。さらにクラブの力の入れ方は異常なほどで、公式SNSでの露出は4500万ユーロ(約53億円)もの莫大な移籍金で入団した同い年のブラジル人FWロドリゴを大きく上回っており、マドリード市内のオフィシャルショップでは久保のユニフォームがトップチームの選手たちと並んで堂々と売られている。かつてカスティージャ所属の選手が、ここまで注目されたことは記憶にない。

 久保がスペインで受け入れられている要因は、その高いプレーのクオリティーであるのは間違いないが、文化や生活スタイルに壁がないことも大きいだろう。スペイン語をネイティブのように操ることにより、通訳を介さず、気持ちの温度をダイレクトに伝えられるため、スペインの人々に「KUBO」を受け入れやすくする環境が生まれているのだ。

 当初スペインでは、「バルセロナの下部組織に過去所属していた選手がレアル・マドリードのBチームに入団した」程度の認識しかなく、スペイン紙「AS」は「日本のメッシで知られるタケフサ・クボ獲得の“クラシコ”にマドリードが勝利した」と、入団自体よりもレアルが元バルセロナの選手と契約したことを強調した。

 さらに7月10日から始まった北米ツアーの取材陣について、「記者が27人来ているが、カナダ人4人、スペイン人11人…そして日本人が12人」とレアルのお膝元であるスペインを凌ぐ日本人記者の多さに驚きを隠さなかった。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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