そこに“長谷部誠がいた” 傑出した予測力が支える充実の時「この時間を楽しみたい」
フランクフルトで輝きを放つ35歳長谷部 ヴォルフスブルク戦では失点を防ぐ“スーパークリア”
「なんでそこにいるんだ!!」
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ヴォルフスブルクのFWヴォウト・ヴェフホルストは、思わず嘆きたくもなっただろう。無人のゴールに蹴りこんだはずのシュートが、ゴールライン前でフランクフルトの元日本代表MF長谷部誠に跳ね返されたのだから。
22日に行われたブンデスリーガ第30節、ヴォルフスブルク対フランクフルト(1-1)の前半10分のシーンだ。ヴォルフスブルクは左サイドをロングパスで上手く攻略すると、抜け出したDFヤニック・ゲルハルトがそこから逆サイドまでボールを折り返す。ペナルティーエリア内でフリーでパスを受けたヴェフホルストは、GKの位置を確認してそのまま左足でダイレクトシュート。ボールはGKの右脇を抜けてゴールに向かった。
だが、ゴールだと思われたその瞬間、視界の外から走りこんできた長谷部がボールをクリアし、フランクフルトのピンチを救ったのだ。滑り込んで必死にはじき返したわけではない。そこにいた。そして慌てずに蹴り出した。
こうしたギリギリの場面でのクリアは、今回だけではない。前節アウクスブルク戦(1-3)でも、ライン上からヘディングで相手のシュートを跳ね返す場面があった。それにしても、なぜ相手のシュートコースが分かるのだろうか。試合後、長谷部本人にそのあたりについて質問をしてみた。
「まず、あそこまで持っていかれるのが良くないディフェンスだと思う。最後の失点の場面(1-0で迎えた後半45分に失点)でも、もう少し何か上手い形でできなかったかなというのは正直あります。みんなが一個一個遅れてしまった」と本来のディフェンスのあり方について語り、失点シーンに対して反省の弁を口にする。ギリギリの場面でのクリアよりも、そもそもピンチにならない方が良いに決まっている。それを踏まえたうえで、前半10分のクリアシーンについて振り返ってくれた。
「ここにくるだろうという予測で自分は動いている。今日もね、相手のシュートコースはあそこしかないかなと思った。そういう部分では、最後の最後の場面でやれているかなと思う」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。