初陣で垣間見せたクロップの狙い 「ゲーゲンプレス」の主軸を担う存在とは

数値に表れたクロップ効果

 この日、リバプールの総走行距離は116km。この数値は今季のリバプールで最長距離となる。対するトットナムは114.8kmと、走行距離では相手に競り勝った結果となった。トットナムはリーグ屈指の運動量を誇るクラブ。クロップ監督は、今季ここまで停滞感を拭い切れなかったリバプールに対し、わずかな準備期間で臨んだ就任初戦で、目に見える改善を施してみせたのだ。

 試合序盤から高い位置でスプリントを繰り返し、連動した激しいプレッシングを披露。相手のボールホルダーに対して、時間とスペースの余裕を与えなかった。ドルトムントをブンデスリーガ連覇などの栄光に導いた戦術「ゲーゲンプレス」で、イングランドでも旋風を巻き起こしてみせる――そんなクロップ監督の宣戦布告のような痛快さが、トットナム戦序盤のリバプールには確かにあった。

 だが、時間を追うごとにこの戦術の難しい面も見えてくる。前線から相手を追い込むため、最終ラインがかなり高い位置取りをするのが一つの特徴だが、これまで比較的ライン設定を低くしたなかでプレーしていたDFマーティン・シュクルテルは、自陣で致命的なミスを連発し、ゴールを脅かされるピンチを何度か招いていた。

 その一方で、この日の試合でポイントとなったのが、クロップ監督が採用した布陣だ。試合前の地元紙やテレビ中継内での予想フォーメーションでは、ドルトムント時代のベースである4-2-3-1の採用が有力視されていた。だが、実際には4-3-3に近い布陣がピッチ上に描かれたのだが、ここにはクロップ監督のはっきりとした意図が存在していた。

 試合中、基本的にはMFルーカス・レイバがアンカーの役を担い、インサイドハーフのポジションでMFジェームズ・ミルナーとMFエムレ・チャンが流動的に動いていたが、時間帯によってはミルナーが下がって、ルーカスとドイス・ボランチを形成することもあった。

 そしてこの時、中盤の高い位置に残るチャンこそ、新生リバプールのキーマンと言えるのかもしれない。

 

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