吉田麻也の焦燥感 「このチームはこんなもんじゃない」

 コートジボワール戦、最終ラインの中央で吉田麻也は味方に対して必死に声を上げ、向かい来る強力アタッカー陣に対応していた。日本の中盤のフィルターを飛び越え、どんどん仕掛けてくる相手を止める度に、吉田は身ぶり手ぶりを織り混ぜながらほえていた。

「とにかく守備というより攻撃が問題で。とにかく相手はボールに食いついてくる。こっちの横パスを狙ってくるし、縦を突いて攻めてきた場面も横パスを引っ掛けられて、推進力のある選手が前に出てくるシーンが多くなってしまった。それはミーティングでも言われていたことだけど、そういう場面が多くなってしまったのが良くなかった」

 責任転嫁というわけではない。組織的な守備というものは攻撃陣、守備陣が一体となって初めて実現できるものだ。序盤から前線のプレッシングがほとんどハマらず、ましてや攻めに転じた際もイージーなパスミスも多かった。その状況では、日本のDF陣が苦しい対応を余儀なくされたのも仕方がない。

「それによって僕もカードをもらってしまったし、相手にFKを何本も与えてしまった」

 23分、中央を容易にすり抜けてきた相手の中盤の選手を吉田が倒し、警告を受けたシーン。仮にそこで止めなければ大ピンチに陥っていた。吉田はいわゆる、“プロフェッショナルファウル”をするしかない状況だった。

 苦しい展開は後半も続いた。特に、後半17分にドログバが入った直後から、完全に守備陣は後手に回ってしまう。同19分、21分と、同様に右サイドからクロスを挙げられ、立て続けに失点。終わってみれば、取り返しの付かない数分間となってしまった。

「ドログバが入ってきて、ボニーと2トップ気味になったことで、クロスに対する相手のゴール前の枚数が増えた。そこでのマークのズレが起きてしまったことは大きかった」

 コートジボワールはこの時間帯、中央で起点をつくり、サイドへと展開。そこからのクロスに対して中央で5人、6人が飛び込んでいく迫力ある攻めを繰り出してきた。

 対する日本は、最終ライン4人が完全にペナルティーエリア内にくぎ付けとなってしまい、ボランチも低い位置に押し込まれて防波堤の役割を果たせず。さらにサイドに展開されると、スライドが遅く相手にはフリーの状態でクロスを上げられてしまう。相手の“数の勢い”に対応することができず。マーク、ポジションにズレが生まれたことで“魔の数分間”を引き起こしてしまった。

 

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