頑固な若者から日本代表のリーダーへ 旧知の記者が見た“キャプテン”長谷部の原点

2006年8月のトリニダード・トバゴ戦でプレーする長谷部 【写真:Getty Images】
2006年8月のトリニダード・トバゴ戦でプレーする長谷部 【写真:Getty Images】

7名の監督と歩んだ日本代表のキャリア

 長谷部は自らのインスタグラムで代表引退に際する思いを吐露しているが、そのなかに印象的な言葉がある。

「日の丸を胸に戦った時間は僕にとって誇りであり、なにものにも代え難い素晴らしいものでした。共に戦った7名の監督方、コーチングスタッフ、代表スタッフのみんな、そして素晴らしきチームメイトたち、最高の仲間でした。特に主将を務めさせていただいた8年間は皆に支えられてばかりでした。貴方達と共に同じ時代に戦えた事は幸せでした」

 ジーコ、イビチャ・オシム、岡田武史、アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、バヒド・ハリルホジッチ。西野朗。わざわざ「7名の」と明記して指揮官へ感謝の意を述べ、スタッフを含めたチーム全員に思いを馳せる。一人の力だけでは物事を成し遂げられないことを学んだ彼は、一人の人間としてだけでなく、チームを束ねるキャプテンの境地にも達した。そして、辛苦を抱えながらも彼が幸せな時を過ごしたように、サポーターを含めた日本代表に関わる者も、その情熱に呼応して一喜一憂できた。

「そして日本代表サポーターの皆様、これまでのサポートに心からの感謝を伝えさせていただきます。12年半の間、様々な事がありました。歓喜も失望も共に味わいましたね。良いときもそうでないときも僕たちの背中を押してくださいましたね。皆様と共に歩んだ時間は僕にとって大切な宝物です。心から、ありがとう!! 最後になりますが、これからは僕も日本代表チームのサポーターです。一緒に日本代表チームに夢を見ていきましょう!!!」

 歓喜も失望も共に味わった――。サッカーという競技の魅力が凝縮された、文字通りの至福を与えてくれた日本代表のキャプテンに、心から労いの言葉を贈りたい。

(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)



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島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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