本田の「服従」発言はハリルへの“造反”なのか 二人の間に存在したサッカー観の対立

ラモス瑠偉とオフト監督の対立と妥協

 日本代表をハンス・オフト監督が率いていた時(1992~93年)、ラモス瑠偉とサッカー観の対立があった。オフト監督は雑誌に批判的なコメントが載ったことでラモスを呼び出して話し合い、両者は歩み寄っている。選手を招集する立場のオフト監督に強く出られれば、ラモスは矛を収めるしかない。

 一方、オフト監督もラモスを不可欠な存在と考えていた。協調しなければ日本をW杯に連れて行けないことは、どちらも分かっていた。サッカー観の溝が埋まったわけではないが、その後は互いの妥協と黙認によってチームは進んでいる。

 ハリルホジッチ前監督と本田も協調できたと思う。しかしラモスのケースと違って、監督にとって本田はおそらくそこまで重要な選手ではなかった。レギュラーポジションが確約された存在ではなかった。とはいえ、影響力の大きなベテランには違いなく、あまりに意見が違うなら本田が外されても不思議ではない。

 本田は素晴らしい選手だが、彼のためにチームがあるわけではないからだ。各国のW杯メンバーから大物が落選するのは毎度のことで、ロマーリオ(ブラジル)もガスコイン(イングランド)もカントナ(フランス)も、三浦知良も中村俊輔(いずれも日本)も外れている。

 監督と選手の意見の衝突は、ある意味サッカーにはつきもので、ハリルホジッチ前監督と本田のケースはさほど深刻でもなかったと思う。W杯までに修復できたか決裂したのかは、もう分からないけれども……。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)

西部謙司

1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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