本田の「服従」発言はハリルへの“造反”なのか 二人の間に存在したサッカー観の対立
「服従」という言葉のチョイスと世間の反応に見る、日本の現状
「悔いはないです。ハリルのやるサッカーに全て服従して選ばれていく。そのことのほうが僕は恥ずかしいと思っているので」
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テレビ番組の中での本田圭佑の発言が、波紋を広げているようだ。見聞きした限りでは、あまり本田に好意的な意見はない。たぶん「服従」という言葉のチョイスが強すぎたのではないかと思う。ただ、そんなに目くじらを立てるような発言でもない。本田の言葉とそれに対する反応を眺めていると、大袈裟に言えば日本の現状が映し出されているような気もした。
監督の指示に従うのは「服従」ではない。勝つための方策はいろいろあるだろうが、誰かがまとめなければチームプレーにならない。監督はそれを決めるために存在するようなものだから、監督が決めたことに選手が従うのは当たり前である。
ただし、いざ試合が始まってみたら監督の作戦どおりでは上手くいかないこともある。したがって、そういう場合に選手の判断で作戦を変えるとか、一部変更することもよくあるわけだ。
プレーが中断したわずかの時間に、選手が監督を捕まえて何か話している場面を時々見かける。想定外のことが起きている時の次善策を話している。
2010年南アフリカ・ワールドカップ(W杯)グループリーグ第3戦のデンマーク戦、遠藤保仁は岡田武史監督に当初の守備のやり方ではダメだと伝えている。この時のデンマークは、現在で言うところの「ポジショナルプレー」を行っていて、日本はそれに上手く対処できていなかった。遠藤は変更を一応監督に通告していたわけだ。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。