【データ分析】ハリルJ「ラスト2戦」の真実 マリ戦で見えた“アフリカ対策”の意図と問題点

[DATA-7]宇佐美と久保のマリ戦でのプレー位置【データ提供:Instat】
[DATA-7]宇佐美と久保のマリ戦でのプレー位置【データ提供:Instat】

対照的だった宇佐美と久保、“切り札”中島は機能

 次に[DATA-7]で示した宇佐美と久保のマリ戦でのプレー位置を見ると、その動きは大きく異なる。サイドのミドルゾーンでのプレー機会が多かった宇佐美に対し、久保はサイドだけでなくインサイドのエリア、ペナルティーエリア横の深いエリアでプレーしていた。

[DATA-8]宇佐美と久保のマリ戦のパスデータ【データ提供:Instat】
[DATA-8]宇佐美と久保のマリ戦のパスデータ【データ提供:Instat】

 宇佐美と久保のマリ戦のパスデータを見れば、その違いはより顕著だ。

 [DATA-8]を見ると、両サイドの選手の受けたパス数は宇佐美22本、久保24本と出場時間がそれぞれ60分と70分であることを考慮しても、ほとんど一緒だ。パス受け数だけの比較ではなく、受けたパスのうち何本のパスを出したかを見ると、パフォーマンスと役割の違いが見えてくる。

 宇佐美は受けたパス数以上の、26本のパスを出していた。受けた数以上に出した数が多いのはセットプレーのキッカーを務める場合、あるいはセカンドボールや相手ボールを奪って味方につなげた場合だ。宇佐美は、受けたパスより18%多くパスを出し、久保は、受けたパスの3分の1のボールを失っていたことになる。シュート3本を考慮し、データに反映させても失っているプレーが多いと言える。

[DATA-9]4選手を同列で比較するために、全員のパス数の数値を実試合時間の95分あたりに換算したもの【データ提供:Instat】
[DATA-9]4選手を同列で比較するために、全員のパス数の数値を実試合時間の95分あたりに換算したもの【データ提供:Instat】

 最後に、後半終了間際に同点弾を放った中島のパフォーマンスを見てみよう。

 [DATA-9]は4人の選手を同列で比較するために、全員のパス数の数値を実試合時間の95分あたりのものに換算した。この結果、中島はパス受数が46本と、1トップを務めた大迫も含めた前線の選手の中で、最も多くのパスが集まっていたことになる。そういう意味で、切り札として投入したハリルホジッチ監督の意向は反映されていたと言える。

 また、受けたパスを後方の選手に戻すのではなく、前線の選手にどの程度つなげられたのかを見ることによって、攻撃における貢献度を見てみた(攻撃パス数として集計)。中島は出したパスの63%を攻撃的な選手に出していた。宇佐美の34%、久保の14%と比較すると35分間という短い出場時間ながら、チームとしては中島を意識的に使い、中島はそれを攻撃的なプレーにつなげていたことが分かる。

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