史上2人目の”母親なでしこ”  サポート制度を初活用へ…監督が指摘する日米の差「当たり前に」

取材に応じた狩野倫久監督【写真:砂坂美紀】
取材に応じた狩野倫久監督【写真:砂坂美紀】

瀬野有希がJFA「育児サポート制度」初利用か 約18年の時を経て広がるママアスリート支援の可能性

 なでしこジャパン(日本女子代表)の狩野倫久監督が、9月3日に千葉県内の「高円宮記念JFA夢フィールド」で合同取材に応じた。アジア競技大会に臨むなでしこジャパンに、ちふれASエルフェン埼玉のMF瀬野有希が追加招集された。2025年に出産を経て昨年8月に競技復帰を果たした瀬野の代表選出に伴い、日本サッカー協会(JFA)が2008年1月に協議・制定した「育児サポート制度」が約18年の時を経て利用されるかに注目が集まっている。

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 今回の瀬野が本制度の正式な認定を受けるかは現時点で未定だが、制度利用の有無にかかわらず、JFAとしては選手側のニーズを最大限踏まえてサポートを行っていく方針だ。狩野監督は海外の事例を引き合いに出しながら、選手が安心してプレーできる環境づくりの重要性を語った。

 瀬野は出産を経てわずか5か月でピッチへ帰還。WEリーグではボランチやセンターバック、アタッカーとしてマルチな才能を発揮している。産後も変わらぬ展開力と高い予測力でチームを牽引してきた。狩野監督は「復帰後もボランチなどで数多くプレーしている。プレシーズンからしっかり視察してきた中で、シーズンを通して良いパフォーマンスが出せている。複数ポジションをこなせるポリバレントな選手」と選考理由を明かす。

 アジア競技大会の期間中、選手が子育てと代表活動を両立できるよう、JFA側もクラブや本人と密にコミュニケーションを重ねてサポート態勢を整えている。JFAの「育児サポート制度」は、2008年1月に、INAC神戸レオネッサの宮本ともみ監督の現役時代に代表招集時などをきっかけに制定されたもの。合宿や遠征への子どもとベビーシッターの帯同費用をJFAが負担し、母親となった選手が代表活動に集中できる環境を整える仕組みだ。

 指揮官は「我々としてもサポートしながら力に変えて思い切ってプレーしてもらえる環境作りを追求している。今回のケースがベースになり、スタンダードになればいい」と期待を寄せる。

 そう語る背景には、過去にアメリカで目撃した衝撃的な光景がある。1年以上前にワシントン・スピリッツを視察した際、FWアシュリー・ハッチが妊娠中に個別練習を行っていたという。

「ボールが来てターンしてシュートを打って、終わったらウエイトトレーニングをしていた。最初は驚いたが、アメリカでは妊娠中や出産後の復帰までが特別ではなく、会場にベビーケアルームがあるのも含めて『スタンダード』になっている」

 日本が遅れているということではないとしつつも、「選手や指導者、サッカーに関わる全ての人が、どんな状況でも安心して思い切って働ける環境は非常に重要」と強調する。瀬野の追加招集と協会の手厚いバックアップは、ピッチ上の戦力補強にとどまらず、日本女子サッカー界における新たな「当たり前」を切り開く大きな一歩となりそうだ。

(砂坂美紀 / Miki Sunasaka)

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