ドイツ移籍決断の20歳「行くしかない」 日本代表未選出も…口にした「W杯しか頭にない」

ヴォルフスブルクに移籍をした塩貝健人【写真:菅原敬太】
ヴォルフスブルクに移籍をした塩貝健人【写真:菅原敬太】

ヴォルフスブルクに移籍をした塩貝健人「6か月後のことを考えたときに、行くしかないと」

「行くしかない」

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 ブンデスリーガ初出場となった20節マインツ戦後、取材に応じてくれたFW塩貝健人の言葉は力強く、そして明確だった。

 前所属のオランダリーグNECナイメヘンは今季上位につけており、EL出場、それどころかCL出場権獲得の可能性も十分ある。クラブサイドも貴重な戦力を移籍させるつもりはなかったが、ヴォルフスブルクサイドは契約書に明記されている固定違約金1000万ユーロ(約18億円)を準備して、獲得を実現させた。

 ヴォルフスブルクスポーツダイレクターのピルミン・シュベークラーは「ケントは若くポテンシャル豊かな選手だ。スピードとインテンシティに優れ、強烈なプレスができる。クラブに非常に合うはずだ」と、残留争いに苦しむクラブの起爆剤として、期待を口にしていた。

 クラブからの思惑とは別に、塩貝本人はどんな思いでこのタイミングでの移籍を決断したのだろう? 来季以降のことを考えたら、ナイメヘンに残留し、自身の成長と向き合いながらELやCLでアピールするという選択肢は悪くはなかったはず。

「僕のなかでは、今ワールドカップ(W杯)のことしか頭にない。どうやったら入れるかって考えたときに、やっぱり高いレベルのリーグで結果を出すことが必要だと思いました。5大リーグで点を量産している日本人フォワードって、今いないと思うんですよ。そこで点を取れれば、文句なしで(代表メンバーに)入れると思う。もちろん監督が決めることですけど、アピールにはなる」

 迷うことなく、その言葉を紡ぎ出した。今回の移籍は、環境を変えるための挑戦ではなく、W杯という目標から逆算した決断。そこにブレはない。オランダでは出場機会が限られながらも、得点という結果を積み重ねてきた。その評価があったからこそ、今回のチャンスが巡ってきたし、だからそれを手放すつもりもない。

「6か月後のことを考えたときに、行くしかないと思いました」

 冒頭の言葉につながった。クラブからの期待は小さくはない。合流から数日後のマインツ戦で早速メンバー入りを果たしただけではなく、後半39分からデンマーク代表MFクリスティアン・エリクセンと交代でデビューを飾った。

 一緒に練習する時間も少ない仲間とプレーするのも、1-3で相手にリードを許した展開での出場も、簡単なものではない。それでも塩貝はすぐに駆け出した。仲間にパスを要求し、ボールを持つと躍動感あるドリブルでボールを運んだ。

「デビューできたのはひとつ大きいことだと思います。ドリブルで剥がしてラストパスを出せたシーンもありました。ああいうのは僕の武器でもあるので、そういうプレーをどんどん増やしていければ、もっとチャンスが来ると思います」

 この試合の出場時間は約10分。結果を出すのに十分な時間というわけではない。だがその短さのなかでも、自分がやらなければならないことを強く自覚している。

「その時間で決めなきゃいけなかった」

 点取り屋としての自負と意欲を感じさせる言葉だ。そんな塩貝に対して、対峙したマインツのMF佐野海舟はこんな風に評していた。

「起点を作られる場面はありましたし、相手の狙いはそこが中心だったのかなという印象です」

 実際にピッチに立って感じたブンデスリーガの印象にはどんなものがあるだろうか? そんな問いに、塩貝は実直な思いを語ってくれた。

「日本からオランダに行ったときも『サッカーが違うな』と思いましたけど、オランダからドイツもまた違いますね。やっぱり球際の激しさ。オランダではそんなに体を当ててこない印象がありましたけど、ドイツは当たりが強い。ボールを少し離してドリブルしようとしたら、簡単に倒されてファウルを取られた。止まっていたらダメだなと思いました」

 順応の必要性を感じながらも、リーグ全体のレベル差については冷静だ。

「ただ、めちゃくちゃ差があるかと言われたら、そこまでではないと思っています」

 このマインツ戦で起用法やプレー内容について、監督から具体的な話はまだなかったという。踏み込んだ話をしようにも、合流から日が短いことを考えれば、あれもこれもを伝えることはできないだろう。そんななか、塩貝は、練習中に伝えられているメッセージを印象深く受け取っているようだ。

「練習中に『フォワードは点を取るだけだ』とか、『ゴールを狙う姿勢が大事』みたいな話はありました。僕もその考えなので、結果を出せれば使ってもらえると思います。しっかりアピールして、プレーする時間をもらえるようにしたい。練習からもっとアピールして、チームメイトとも噛み合わせていきたいです」

 ブンデスリーガという新たな舞台で、まだスタートラインに立ったばかり。しかし、その視線は一貫してW杯を見据えている。続く20節ケルン戦では後半開始から45分間プレー。激しいチャージでイエローカードをもらったり、惜しいシュートを見せたりと、その存在感を少しずつ高めている。

 貪欲に求められているのは、ただ一つ。フォワードとしての価値をシンプルに示す、ゴールという結果だ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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