苦節26年、“ボトム3”最後の一角がJ1へ 人件費はわずか6分の1も…残留へ有利な条件

水戸は2019年から徐々に営業収入を増やしてきた
2025年のサッカー界にとって大きな出来事の一つといえば、水戸ホーリーホックが2000年のJ2リーグ参戦から苦節26年、ついにJ1昇格を決めたことだろう。J2リーグ参入当時はヴァンフォーレ甲府、サガン鳥栖と水戸が常にボトム3。だが甲府は2005年の昇格プレーオフを制して2006年にJ1へ、鳥栖も2011年2位となり2012年にJ1へとトップフライトを果たしていた。
【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!
ただ1チームだけ苦労を続けていた水戸が今回、優勝で昇格を決めたことは、昔の苦労を知っている他のチームのファンからも喜ばれたことだろう。
水戸は同じ県内に鹿島アントラーズというJリーグの強豪を抱え、経済的にも苦労してきた。だが財務状況を新型コロナウイルスの影響が出る直前の2019年から振り返ると、水戸が着実に歩んできたことがよく分かる。
水戸の営業収入が前年を下回ったことはない。また、2020年度はコロナ禍でJ2クラブの平均営業収入が前年比91%に落ち込む中、水戸は101%と逆に伸長させた。またトップチーム人件費も、他J2クラブが前年比95%に落ちたのに対し、水戸は104%と前年を上回って見せた。
Jリーグが全体的に回復の兆しを見せた2022年度、J2クラブの平均営業収入も115%と増えた。だが水戸はそれを上回る124%を売り上げている。この伸び率は、J1クラブの営業収入が117%だったことをも上回っている。
また2024年度も、J2クラブの営業収入が前年比95%、トップチーム人件費が84%と落ち込む中、水戸は営業収入で111%、トップチーム人件費で108%の伸びを見せる。クラブ経営の努力が、はっきりと数字として表れているのである。
今回の昇格が水戸にとって幸運だったのは、水戸が昇格候補だったわけではないという点だ。2019年は得点数の差でプレーオフ圏外の7位だったものの、その後2020年は9位、2021年は10位、2022年は13位、2023年は17位、2024年は15位と低迷した。
下部リーグのクラブが経済的に疲弊していく要因の1つに、「何年も昇格できそうで、できない」という状況がある。あと少しで昇格できそうだったのだからと選手を引き留めるために年俸を上げるが、下部リーグ所属では大幅な収入増はなかなか見込めない。それが繰り返されることで、クラブは苦しくなっていく。
しかし、水戸のように15位から一気にジャンプアップすると、選手の人件費を抑えたまま昇格を手にすることになる。所属選手には一度の大幅増額で済み、しかもJ1昇格によって収入増が見込めるため、非常に有利な状況で昇格を果たしたと言える。
J1に昇格すると、どれくらいの収入増が見込めるのか。たとえば2005年のJ2・甲府は営業収入が6億7000万円だった。それが2006年の昇格した年には13億4300万円と、前年比200%に伸びた。2011年のJ2・鳥栖は6億8900万円だったものが、2012年には14億5400万円と、こちらは211%の増加となっている。
だから水戸もバラ色の未来が……と言いたいところだが、もちろん不安要素はある。
たとえば2024年度のJ1クラブの平均営業収入は58億2400万円。一方の水戸は12億2400万円。トップチーム人件費はJ1クラブ平均が20億8600万円なのに対し、水戸は6分の1にも満たない3億7200万円に過ぎない。
2024年度のJ1でもっとも営業収入が少なかったのは湘南の28億9600万円、トップチーム人件費は東京ヴェルディの9億200万円だった。水戸は来年からこの経済規模の中で戦うことになる。
幸いなことに2026年はシーズン移行の特別開催で、2026-27シーズンが始まるまでに助走する期間がある。その間に財務、そしてチームの両方を整える時間がある。26年間耐えてきたチームが花開けば、水戸のファンだけでなく、下部リーグのチームにとっても大きな希望となるのは間違いない。
(森雅史 / Masafumi Mori)

森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。



















