日本の勝利を呼び込んだ「FVS」は何? 選手とベンチが生む新たな“連携”…J2、J3での導入は「検証が必要」

U-20日本代表のPK獲得につながったFVSとは?【写真:AP/アフロ】
U-20日本代表のPK獲得につながったFVSとは?【写真:AP/アフロ】

扇谷健司委員長がU-20W杯で導入された「FVS」

 日本サッカー協会(JFA)は10月1日に審判委員会のレフェリーブリーフィングを実施。現在開催中のU-20ワールドカップ(W杯)で導入されているフットボール・ビデオ・サポート(FVS)について、扇谷健司委員長は「リーグとも今後どうするかは考えないといけないと思う」と話した。

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 FVSは、両チームが2回ずつ審判団の判定に映像確認を要求する権利を持つもの。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が介入するのと同じ、得点や退場といった大きな判定に関わるものにのみ使用できるが、ベンチから第4の審判員に専用のカードを手渡すことで、プレーが切れたタイミングで主審が当該場面の映像を確認する。それにより判定が変更になった場合は権利の回数は消費されない。

 現地時間9月30日に日本が開催国チリと対戦したU-20W杯のゲームでは、前半に日本がPKを獲得した場面でチリがFVSの権利を使用して映像の確認を行ったが、判定は変わらずにPKのままだった。一方で、後半には日本がMF齋藤俊輔が左サイドからカットインして相手にペナルティーエリア内で倒された場面で当初はノーファウルの判定だったが、齋藤がベンチにFVSの使用を要求するアクションを見せ、それを受けての手続きで映像確認がされるとPKの判定になった。

 このシステムは女子でもアンダー世代の世界大会で導入された。扇谷委員長は「今、FIFA(国際サッカー連盟)がいろいろなトライアルで、女子の欧州チャンピオンズリーグ(CL)やイタリア・セリエCでも導入して、普及させたい意向は分かる。実際にJFAではやったことがなく、小泉(朝香審判員)がU-17女子W杯でやったことがあるくらい。どうするかは今のところ言えないけど、リーグとも今後どうするかは考えないといけないと思う」と話した。

 FIFAが設定しているものの中には、カメラ台数や審判員の人数といった予算を節約できるVARライトというシステムもあるが「あまり多くの国でやっているように見えない」と扇谷委員長が話すように普及は限定的だ。それだけに、FVSは日本を例にとるならJ2やJ3での導入といった選択肢が浮上するが「全部の国でVARを入れるのが現実的でない中、比較的に安価で人も多くかけずにできるという点で、トライアルを持ってFIFAがどう考えていくのかを見定める必要があると思う」と扇谷委員長は話した。

 映像を用いても審判団のみで判定が完結するVARに対し、FVSではチーム側から審判に判定の確認が要求できるという点で大きく違う。他競技のチャレンジ制度にも似たニュアンスがあるだけに、扇谷委員長は「良し悪しはいろいろとあると思う。大会(U-20W杯)が終わると、チャレンジしたものに対する確率も出るだろうし、検証が必要だと思う。例えばバレーボールでは、最後にとりあえず1回使うようなことがあるのも目にする。また、時間稼ぎに使うようなことがあるかどうかの懸念もあるのかなと思う」と、現時点での所感や懸念材料についても話した。

 試合を行う選手たちやチーム、テクノロジーと現場の審判員による判定との新たな関係性を生み出すFVSだが、今後の世界的な展開がどのようになっていくのか注目される。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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