バルサ番記者が語るリアルな声「誰もがポジティブには…」 古巣相手に奮闘の久保建英「最も脅威」

バルセロナ戦に途中出場した久保建英【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
バルセロナ戦に途中出場した久保建英【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

現地メディアも久保を高く評価した

 足首に痛みを抱える久保建英は、途中出場したバルセロナ戦で決定機を逃したものの、手応えを感じさせるパフォーマンスを見せた。

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 前節マジョルカ戦で6試合目にして今季初勝利を挙げ、降格圏から抜け出したレアル・ソシエダはその勢いを維持すべく、9月28日のラ・リーガ第7節で昨季の王者バルセロナとアウェーで対戦した。

バルセロナが今季も使用する「エスタディ・オリンピック・リュイス・コンパニス」【写真:高橋智行】
バルセロナが今季も使用する「エスタディ・オリンピック・リュイス・コンパニス」【写真:高橋智行】

 バルセロナは未だにカンプ・ノウの使用許可が下りず、依然としてスタジアム問題は解決していない。今回も昨季同様にエスタディ・オリンピック・リュイス・コンパニスにレアル・ソシエダを迎えた。その前のホームゲーム2試合は練習場併設の6千人収容のエスタディ・ヨハン・クライフで行われていたため、多くのサポーターにとって今季初めて本格的に観戦できる日となり、5万人を超える人々が訪れた。

 試合はバルセロナが90%近くボールを保持した展開で進むも、先制したのは予想外にもレアル・ソシエダだった。アンデル・バレネチェアの素晴らしい突破からのクロスを、アルバロ・オドリオソラがゴール前で押し込んだ。しかし前半終了間際、CKからジュール・クンデにゴールを決められてしまい、1-1でハーフタイムを迎えた。

 久保はメキシコ戦で負った足首の怪我が完治せず3試合ぶりのベンチスタート。出番が訪れたのは後半12分だったが、その直後、ロベルト・レバンドフスキのゴールで逆転を許す苦しい展開となった。出だしこそ守備に追われる時間が続いたが、徐々に相手のペースに慣れていくと、27分に最初のチャンスが訪れる。シュートはポストに当たった後、枠外となったが(最終的な判定は直前にパスを出したブライス・メンデスのオフサイド)、このプレーは存在をアピールするのに十分だった。さらに39分、左足で放った強烈なシュートがクロスバーを直撃すると、会場からどよめきが起こった。

 チームはアレックス・レミーロの好守に助けられながら粘り強く戦うも、最後まで同点にできずに1-2で敗れ、降格圏一歩手前の17位に後退。久保のバルセロナ戦の公式戦通算成績は、12試合(先発7試合)、728分出場、2勝0分10敗。得点、アシストともにまだ1度も記録していない。

 セルヒオ・フランシスコ監督は前日会見で、久保の足首は問題ないと説明していたが、本人が試合後に「今週は一旦休んで、リーグ戦(ラージョ・バジェカーノ戦)に間に合えば。ちょうど7日あるので」と明かし、「代表ウィークも含めて治せる時にゆっくり治したい」と語ったように、思った以上に深刻な状態にあるようだ。

 短い時間の中で見せた久保を、スペイン各紙は全体的に高く評価した。「マルカ」紙、「AS」紙はともに2点(最高3点)と採点。クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「切れ味鋭いプレーを披露し、自信に満ちていたように見えたので、チームメイトが彼のことをあまり見つけられなかったのは残念」と寸評し3点(最高5点)。「ノティシアス・デ・ギプスコア」紙は、「まだトップレベルには程遠いが、クロスバーを直撃し、奇跡的に同点にならなかったシュートは本当に素晴らしかった」と称賛したが、出場時間の短さから点数をつけなかった。

ナダル・ヴィラ記者(左)とコロミナル・ヴィマ記者【写真:高橋智行】
ナダル・ヴィラ記者(左)とコロミナル・ヴィマ記者【写真:高橋智行】

バルセロナの番記者「攻撃に明快さが生まれた」

 バルセロナの地元日刊紙「ディアリ・アラ」で同クラブの番記者を務めるナダル・ヴィラ氏も、久保のパフォーマンスをポジティブに捉えていた。

「ラ・レアルがミッドウィーク開催の疲労を考慮して大幅なローテーションを行い、足首に問題のあった久保は後半途中からの出場となった。ラ・マシア(バルセロナの下部組織)での過去がある彼にとってこの対戦は常に特別な意味を持つ。今日のラ・レアルはやや精彩を欠いていたが、彼の投入によって攻撃に明快さが生まれた。最もバルサに脅威を与えた攻撃の選手は久保だったよ」

 この試合は特に、5試合ぶりに戦列復帰したバルセロナのラミン・ヤマルに注目が集まった。人気は絶大で、スタジアムには彼のユニフォームを着たサポーターが本当にたくさんいた。後半途中からピッチに入ると大歓声が沸き起こり、レバンドフスキの決勝点をいきなりお膳立てしてみせ、皆の期待に見事応えた。ヴィラ記者に左利き、右サイドのアタッカーなど似た特徴をいくつも備えたヤマルと久保はどのように見えているのか。

「ヤマルを現代のどの選手とも比較するのは難しい。技術力の優れたウイングで、内側に切り込む動きからゴールを決められるところは、確かに2人に共通している。どちらもチームメイトのプレーを引き立て、チーム全体のパフォーマンスを向上させることができる選手たちだ。それでも、ヤマルは先日のバロンドールでウスマン・デンベレに次ぐ2位に輝いた。ヤマルの才能は、ごく一部の選ばれし者だけが持てるもの。言わばメッシと誰かを比較するようなものだ。今、彼に及ぶ選手はほとんど存在しない」

 久保が今夏、移籍の可能性が頻繁に報じられながらもレアル・ソシエダに残留したことについては、次のような印象を持っている。

「ビジャレアルやマジョルカなどさまざまなチームにレンタル移籍していたが、そのキャリアの中でもラ・レアルで著しく成長できたことは非常に大きい。良いオファーがあればもちろん、ラ・レアルより大きなクラブに移籍したいという気持ちもあるだろう。しかし彼は今、ラ・リーガでも有数のクラブで、皆に愛され、重要視され、主役として扱われていることを十分理解している。それが良質のプレーにつながると感じているからこそ、ラ・レアルに残留することがベストだと判断したのだと私は理解している」

 昔から久保に好印象を持つという、地元ラジオ局「カタルーニャ・ラジオ」のコロミナス・ヴィマ記者にも話を伺う機会を得た。

「久保はバルサのカンテラにいた時からずっと注目していた選手だ。当時から試合の流れを変える能力があったので、とても気に入っていたことを今でも覚えている。バルサからレアル・マドリードの一員へと意識を変えたことで、ここバルセロナでは誰もが彼のことを私のようにポジティブに受け止めているわけではないのも確かだ。ただ、どこのクラブとか関係なく、彼が大きな違いを生み出せる選手なのは間違いない。今日は決定力が少し欠けていたが、平均的に能力の高い選手であり、私はレアル・ソシエダで最高の選手の一人だと思っている」

 レアル・ソシエダは開幕から7試合で、わずか1勝と厳しい状況が続いている。次の相手は同じく1勝2分4敗の勝ち点5で15位につけるラージョ・バジェカーノ。久保のメンバー入りは不透明な状況だが、今季2度目のインターナショナルブレイク前に、もう一度悪い流れを断ち切らなければならない。

(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)



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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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