新天地ドイツで苦境も「示し続けていきたい」 主力顔ぶれ変わらず…必要な”新陳代謝”「毎試合出たい」

ブンデスデビューを飾ったマインツの川﨑颯太
今夏、京都サンガF.C.からドイツ1部マインツにレンタル移籍をしたMF川﨑颯太が、25-26シーズン3節ホームのライプツィヒ戦で、75分から出場し、ブンデスリーガデビューを果たした。試合には0-1で敗れ、うまくボールに絡めるシーンが少なかったとはいえ、まず試合に出たことに価値がある。
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満員のスタジアム。ファンの大きな歓声。感情がぶつかり合う舞台。川﨑はピッチに立った感触を噛みしめていた。
「やっぱり、すばらしいですね。だからこそファンには勝利を届けたいですし、喜び合いたいなと思います」
実際にマインツには川﨑の活躍が必要な確かな理由があるのだ。昨季までエースだったヨナタン・ブルカルトがフランクフルトに移籍。開幕戦でレッドカードをもらったドイツ代表FWパウロ・ネーベルが2試合の出場停止。さらに韓国代表FWイ・ジェソンが代表戦で負傷離脱と、前線に問題を抱えている。
チャンスを全く作れていないわけではない。ライプツィヒ戦だと相手守備ラインを攻略し、ペナルティエリア付近からラストパスを送るところまではボールを運べている。ただそこから最後のパスがゴール前に届かない。途中でカットされたり、ペナルティエリア前に好タイミングで好ポジションに選手が入ってこなかったりして、ファンをやきもきさせている。
「個人の質もあると思いますし。もう少し、相手を見てやるというのが大事だと思います。そのまま流れのままやっちゃってる感じもある」
日本代表MF佐野海舟はそう指摘していた。川﨑はその辺りどのように見ているのだろうか
「最後のクロスへの入り方であったり、どこからどうクロスを上げるかとかもそうだと思います。後ろからつないでつないでビルドアップしてというチームではないので、セカンドボールの拾い方とかをもうちょっと整理したら、絶対もっとチャンスが広がる。チャンスが多くあれば、自然と点も増えるんじゃないかなと思います」
クロスを上げるタイミングについても言及していた。
「相手がそろった状態でクロスを上げると厳しいと思います。相手センターバックとキーパーの間に速いボールを入れるとか。(ペナルティエリア内の)自分たちの人数を増やそうとするけど、相手も帰ってきちゃってるみたいな状態だと思う。相手がそろう前にクロスを上げられるかどうかが大事だと思います」
1年目から主力に割ってメンバーに食い込めるか
前述したように前線の主力選手が移籍や負傷でいないチーム事情があるとはいえ、それ以外の守備陣から中盤に関しては昨季と顔ぶれはまるで変わっていない。インテンシティの高いプレスでセカンドボールをどんどん拾い、縦への鋭い矢を何度も放っていくスタイルは健在。昨季はそれが見事にはまった。ただ相手も当然対策を考えてくる。マインツが得意とすることを逆にやられると、打つ手がなくなり、試合を落とすというのは昨季もあった。だからこそ、それ以外のバリエーションが求められている。
「去年どおりにしても難しいところがあると思う。『こんな感じでいけるだろう』だけじゃなくて、いけないときのもう1つの矢。アップグレードしなきゃいけない。そういう面でいうと、僕とか新しい風が入ってきて、新陳代謝じゃないですけど、チーム内で刺激をさせないと変わらないのかなと思います」
ライプツィヒ戦では終盤の15分間だけとはいえ、中盤の構成には興味深いものがあった。佐野が1人でアンカーの位置に落ち、ドイツ代表MFナディム・アミリと川﨑がその前でコンビを組むようなパターンだ。これが確かなオプションになってくると、前線からのプレス力を落とすことなく、中盤での構成力をアップさせることが可能なはず。
「僕は6番のポジション(ボランチ)、8番のポジション(インサイドハーフ)、10番のポジション(トップ下)と、真ん中だったらどこでもこなせると思っています。試合展開によって、負けていたら僕がちょっと低い位置で、アミリが前に出ていて、今日みたいなプレーでもいいし、逆に負けていてももっと前からプレッシャーいきたいときは、俺が前に行って追い込んでとかができる。そういういろんなオプションができるということを示し続けていきたいです」
ポジション争いは簡単なものではない。この日スタメン出場したノディンが悪くないプレーでアピールに成功していたし、ネーベルも復帰。ブンデスリーガの舞台でチームに貢献するパフォーマンスを連続出せるようになるには、それなりに時間は必要だ。「トレーニング時間は日本より短いけど、インテンシティはずっと高いです」と﨑本人が口にするように、日常からのアピールを繰り返して、出場機会をつかんでいかなければならない。
「毎試合出たいですし、このチームで成功したい。昨季マインツは6位だったから、それ以上の順位を目標にしたい」
マインツへの加入後に、クラブホームページでアップされた川﨑のインタビュー記事にそんな言葉があった。今季のマインツはブンデスリーガ、ドイツカップに加えて、ヨーロッパカンファレンスリーグもある。過密日程を戦い抜き、リーグでも上位を狙うためには、川﨑の力が間違いなく必要になる。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。





















