久保建英の役割は「ゴールすることではない」 現地記者が断言…28歳の加入は「大きく影響する」

ソシエダの久保建英【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
ソシエダの久保建英【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

現地記者が久保のプレーについて言及「決定的な存在だった」

 スペイン7シーズン目、レアル・ソシエダで4シーズン目のシーズンをスタートしたばかりの久保建英だが、早くもチームは昨季同様に厳しい状況となっている。

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 久保自身は開幕から2試合連続で得点に関与し、好調なスタートを切った一方で、チームは2戦連続の引き分け。これ以上の低迷を阻止すべく、8月30日にアウェーで行われたラ・リーガ第3節で開幕から2連敗中のオビエドと対戦した。

 オビエドはかつて、プリメーラ3位の好成績を収めたこともある名門クラブ。この日のホームスタジアム、カルロス・タルティエレは25シーズンぶりに1部復帰を果たしたチームの初勝利を期待するサポーターであふれかえっていた。中でも目についたのは、40歳の今なおチームに貢献するスペインサッカー界のレジェンドのひとり、サンティ・カソルラのユニフォーム姿の人々が多数いたことだ。

 悪い流れを断ち切りたいセルヒオ・フランシスコ監督はこの一戦に向け、システムを4-3-3からミケル・オヤルサバルをトップ下に配置した4-2-3-1に変更。しかし、前半のチャンスを活かせずに0-1で今季初黒星を喫し、開幕から未勝利が続いている。

 右サイドハーフで起用された久保は前半にシュートを2本打つも決められない。キッカーを任されたCKも得点につながらず、不本意な出来で後半21分にゴンサロ・ゲデスとの交代を余儀なくされた。ラ・リーガ開幕からの3試合で勝ち点2というのは、久保がレアル・ソシエダに加入してから最低の成績である。

 レアル・ソシエダの選手に対するこの試合の現地紙評価は全体的に低かった。久保も例外ではなく、全国紙の「マルカ」は1点(最高3点)、「アス」は最低の0点(最高3点)との評価を下した。

 クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「相手を圧倒するだけのクオリティーを十分に備えているが、縦への突破がなく精彩を欠いた」と寸評し、1点(最高5点)。もうひとつの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「最も期待されていたにもかかわらず、非常に悪いパフォーマンスだった」と指摘し、3点(最高10点)をつけた。

 スペイン各紙の久保評価は総じて低かったが、この試合の取材に訪れていたスペインのラジオ局「ラジオ・マルカ」のボルハ・フェルナンデス記者の見解は違っていた。

「交代には正直驚いたよ。ラ・レアルは全体的に調子が良くなかったし、久保のパフォーマンスも良かったとは言い難い。それでも前半は決定的な存在だった。彼はチームでも優れた選手の一人であり、チャンスを何度か作っていたが、チームの調子が悪い時、一人の選手がどんなに良くてもあまり意味はない」

「ラ・レアルのベンチにはゲデスなど、試合の流れを変えるための選択肢がいくつかあったが、良い選手は早く交代させるべきではないと思うし、今の久保はラ・レアルで大きな違いを生み出している選手だ。彼の交代によってラ・レアルが多くのものを失ったのは明らかだった」

スペインのラジオ局「ラジオ・マルカ」のボルハ・フェルナンデス記者【写真:高橋智行】
スペインのラジオ局「ラジオ・マルカ」のボルハ・フェルナンデス記者【写真:高橋智行】

フェルナンデス記者「リードする存在になってほしい」

 レアル・ソシエダで4年目を迎えた久保に対するフェルナンデス記者の期待は非常に大きく、昨季以上に重要な選手になるべきだと考えている。

「ラ・レアルは特に近年、毎年のように主力選手が抜けているので、久保にはこれまで以上に責任を負い、ピッチ内外でチームをリードするような存在になってほしい」

 一方、昨季の成績(公式戦52試合出場、7得点4アシスト、ラ・リーガ36試合出場、5得点0アシスト)に関しては特に問題ないと感じているようだ。

「もし久保が年間10ゴールを決め、15アシストを記録していたら、レアル・マドリードやバルセロナに所属していたかもしれない。でも彼の主な役割はゴールすることではない。彼がやるべきことはウイングとしてチームに貢献することだ」

「どんなに良いプレーをしてもアシストが付かないこともあるし、ゴールに貢献する方法はアシストだけではない。彼が今季すでにやっているように、プレーの起点になることもあれば、相手の裏に抜ける動きもある。彼はアシストの有無に関係なく、対戦相手にとって脅威となる選手だ」

 レアル・ソシエダは今夏、ラ・リーガの中で最も補強の動きが遅いクラブだったが、最終的にクロアチア代表DFドゥイェ・チャレタ=ツァル、元ポルトガル代表FWゴンサロ・ゲデスに続き、ジローナからベネズエラ代表MFヤンヘル・エレーラ、パリ・サンジェルマンから元スペイン代表MFカルロス・ソレールを獲得した。フェルナンデス記者は中でも、カルロス・ソレールの補強は久保にとって重要なものになると考えている。

「カルロスは経験豊富な選手なので、中盤の大黒柱(マルティン・スビメンディ)を失ったラ・レアルにとって非常に良い補強となるだろう。国際試合や大舞台で臆することなくプレーできる彼のような選手がチームには不足しているからね。彼の加入はまた、久保にも大きく影響するはずだ。カルロスのようにボールさばきがうまく、視野の広い選手が中盤にいれば、久保はもっと楽にプレーできるようになるし、パフォーマンスもより良くなるだろう」

 またフェルナンデス記者は、レアル・ソシエダが開幕から1度も勝てていない理由を次のように分析した。

「原因はいくつかあると思う。まず、スビメンディやナイフ・アゲルドが抜けた後に何人か補強したが、まだ選手たちがうまく連携できていないように見える。でもそれ以上に、長年チームを率いたイマノル・アルグアシルの退任が大きな痛手になっているはずだ。私は彼が下部組織を率いていた時からあの熱意が本当に好きだった。今はまだ、さまざまな変化の代償を払っている段階なのだと思う」

 レアル・ソシエダはこの後、インターナショナルブレイクを挟み、ラ・リーガ第4節でレアル・マドリードをホームに迎える。強敵相手に今季初勝利するためには、日本代表の一員としてアメリカ遠征に参加する久保がコンディションを崩さずに戻ってこられるのか、そしてセルヒオ・フランシスコ監督がこの中断期間にチームをどのように修正できるかが鍵となるだろう。

(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)



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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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