本職は左サイドの24歳を大胆起用「ほとんどない」 壮絶5発の逆転勝ち呼び込んだ「私の仕事」

長谷部茂利監督がゴールを決めた宮城天の起用法について話した【写真:徳原隆元】
長谷部茂利監督がゴールを決めた宮城天の起用法について話した【写真:徳原隆元】

本職派左サイドの宮城天を右サイドで起用した長谷部監督

 試合後に行われた記者会見。川崎フロンターレの長谷部茂利監督が語った言葉が印象的だった。途中出場で一時は勝ち越し点となるチーム3点目のゴールを決めたMF宮城天について問われて答えたときだ。

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「この場で喋ったことが選手の目に入るといいのですが、私はいい準備をしている選手を見極めよう、見極めようと日頃から考えています。そういう準備をしている選手にチャンスを与えるのは私の仕事、役割なので」

 この試合まで公式戦13試合連続負けなしと快進撃を続けてきたFC町田ゼルビアを相手に5得点を奪い、5-3で逆転勝利を飾った。先制、逆転、同点、勝ち越し……。息詰まるシーソーゲームを制すポイントになったのが、指揮官が繰り出した選手起用だった。

 試合は開始早々から両チームが得点を重ねる激しい展開だった。前半20分に伊藤達哉が右足でロングシュートを決めて川崎が先制。町田は28分にナ・サンホのヘディング、36分には下田北斗の約30メートルの直接FK弾で試合をひっくり返し、前半アディショナルタイム4分にエリソンのヘディング弾で川崎が同点に追いついた。

 後半に入ると、しばしはこう着状態が続いた。試合が再び動いたのは同20分。左サイドをエリソンが駆け上がって上げたクロスを宮城天が押し込んで川崎が勝ち越しに成功。同26分に藤尾翔太に決められて再び振り出しに戻ったものの、33分にエリソン、後半アディショナルタイムにはマルシーニョが決めて、町田に3か月ぶりの土をつけた。

 後半に試合を動かした宮城天がピッチに立ったのは後半15分のことだった。先制点を決めていた伊藤達哉が足を痛めたこともあって、長谷部監督から声がかかった。川崎の下部組織で育った24歳の本職は左サイド。ただ、この日、宮城天が入ったのは伊藤がいた右サイドだった。

 起用の意図を、指揮官は試合後にこう明かした。

「彼はすごくいい準備をしています。今回、左が得意な選手がベンチに多かったと思うんですけれども、彼はそれを分かって右側の練習を少ししていました」

 町田戦に向けた準備を進めるにあたって、宮城は本職ではない右サイドの練習にも励んでいた。その姿を長谷部監督は見ており、姿勢を買っての起用だった。

途中出場からゴールを決めた宮城天【写真:徳原隆元】
途中出場からゴールを決めた宮城天【写真:徳原隆元】

「彼の態度、練習の姿勢が私にそういう気持ちにさせた」

 宮城はこう語る。

「毎回右の練習をしてるわけじゃないですけど、今日は(橘田)健人が先発というのがわかった中で、そこで左で出たい気持ちはありますけど、前線ならどこでも得点するチャンスはありますし。右で出た時にも結果だったり、やる役割もしっかりはっきりしておけば監督も出しやすい。監督は右でも出してくれそうな雰囲気があった。自分も右でシュートも打てますし、得点できるイメージはあった」

 チーム状況を理解したうえで、自身に求められる役割、どうすればチームに貢献できるか、そしてピッチに立てるかを考えたうえで、右サイドでの準備を怠らなかったことが今回の起用につながった。

「選手と同じように私にも役割がある。その役割がうまくいったというか、助けられた。彼の実行しているその態度、練習の姿勢が私にそういう気持ちにさせた。右サイドハーフで行け、と。あまり右サイドハーフで出たことはないと思いますが、それでもあれだけできると思いました」

 また、この日はスピードを武器とするブラジル人助っ人のマルシーニョをスタメンから外し、切り札としてベンチに置いた。1トップのエリソンはスピードを生かして町田の守備陣を何度も切り裂き、2得点をマークした。

「サッカーに携わって何年も経ち、自分のチームの選手もわかっていますが、相手選手の特徴もよくわかっています。スピードのある無し、相手チームのことですから、あまり言いたくありませんが、長所と短所、それぞれの選手の、突いていったらチャンスになるんじゃないかなというところを、今日のところは自分たちの長所でつくところができたと考えています」

 宮城が右サイドから決めた一撃はこの日、川崎の勝利の象徴的なゴールだった。普段の練習態度、準備の姿勢に目を光らせて評価し、起用につなげた長谷部監督の慧眼と采配に唸る一戦だった。

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