突きつけられた「いつ治るか分からない」 大怪我乗り越え…長友佑都に「負けるつもりはない」

バングーナガンデ佳史扶が約1年の負傷期間について話した
6月18日に行われた天皇杯2回戦のツエーゲン金沢戦で、383日ぶりに出場したFC東京のDFバングーナガンデ佳史扶。先が見えずに、怪我で苦しんだ約1年間の期間と、先輩からの影響、自分の現在地について聞いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・上原拓真/全2回の第2回目)
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「いつ治るか分からない怪我」を約1年かけて乗り越えた。
2024年のパリ五輪を目前に控えたU-23日本代表のアメリカ遠征のトレーニング中に左足を負傷し、そこから戦線離脱。過去に半月板損傷や骨挫傷という怪我を経験した佳史扶に突きつけられた「いつ治るか分からない」。先が見えない負傷期間から約1年が過ぎた。
本来であれば今季開幕前のキャンプから合流できる予定だった。順調にリハビリが進み、次の日にチーム合流を控えた動作確認の最終日で痛みが再発。これまでのサッカー人生で「その時はもう本当に、一番辛い時期だった」と振り返る。
「それまでの期間で一番順調にリハビリが進んできて。そこでキャンプで2、3日動作の確認をしたら、もうチーム合流しようって言って、次の日にチーム合流という動作確認最終日で、また最初からになってしまった」
見えていた光が途絶えた瞬間だった。それでも、今季から指揮を執る松橋力蔵監督からは「佳史扶の力も分かってるから本当に焦らずしっかり治すことだけに集中してくれ」と声をかけられ、「見てるから絶対、本当に焦らず大丈夫だよ」と後押しされた。松橋監督の言葉に「またここから、1からやり直そう」と気持ちを切り替えることができた。
怪我から復帰するにあたり、新しい身体に向き合い続けた1年間でもあった。再発の恐れも感じながら、それでもまた1から積み上げていくことを選択した。これまでと変わらない自分の姿勢を貫き、「今の自分ができることはなんだろう」と常に考えながら、できる範囲でのトレーニングに取り組み、新しい身体を作ることに専念した。
「身体の動かし方を自分の中で変えてるので、(怪我前に)戻すっていうより、新しい身体でどれだけ上げていけるか、どんどん積み上げていけるかみたいな感じです。戻すって考えちゃうと、自分のなかでいい時の感覚もあるんで。それどおりに身体が動かないと、無理に動かしちゃったりして。そうなるとやっぱり再発だったり、色々うまくいかない確率が高くなってくるので」
「今はもうほんとに、新しいカシーフとしてやってるので、毎日試行錯誤してるって感じです」。新しく生まれ変わった「NEWカシーフ」として、6月18日の金沢戦で383日ぶりに、公式戦の芝を踏んだ。
先輩・長友佑都は「カッコいい」
怪我から復帰するにあたり、多くの人からの支えを再確認できる期間でもあった。一番近くで支えてくれたのは家族の存在。復帰した今だからこそ感じることがある。
「今考えると、すごい気を遣ってくれてたというか。サッカーのこととか、身体のことを考えないように接してくれてたのかなって思います」
そして、チームメート、スタッフからは「いつでも待ってるぞ!」と声をかけられ、それが復帰への原動力にもなった。「練習に部分合流できるかできないかみたいなところで何回も、振り出しに戻るっていうのがあった」というなかで、「諦めるなよ!」と常に寄り添ってくれる存在が佳史扶にとって支えになった。
そのなかで、同じサイドバックの先輩・DF長友佑都からは「継続することの大切さ」を学んだ。それが怪我の期間も、復帰をした今でも佳史扶のなかで意識することの1つになった。
「今やるべきことをやり続けてああいう風に、影でやってたことを表舞台でバンって出すっていうのは、同じポジションとしても、先輩としてもカッコいいなと思います。僕もこういう選手になりたいなっていうのを日々思ってて、でも負けちゃいけないんで、そこは。
もう憧れだけではいけないと思うので。尊敬はしてるんですけど、負けるつもりはないので。今は佑都さんから刺激をもらってばっかりなので、自分も何かを与えられるようなプレーをしていけるように、もっとコンディションを上げていきたいなと思ってます。
佑都さんとジョギングしたりして、2人で話してると、いつもやっぱり継続することの大切さをすごい教えてもらうんです。いい時はやれる選手が多いなかで、悪い時にいかに、準備のところだったり、トレーニングのところだったりを続けられるかっていうのが、佑都さんの才能というか、すごいなって一番思うところなんですけど。佑都さんと話すと、その大切さをすごい言われるので、そこは僕自身、怪我してる期間も今もそうですけど意識してます」
大先輩から刺激をもらうなかでも「憧れだけではいけない」。佳史扶にとっては、先輩を追い越して戻りたい場所がある。
「まずは自分のことに集中して、しっかり目の前のことをやって、東京で結果を出すっていうのが、今自分の中で軸として一番にあって、それができたら自然とその代表とか、色々なものが見えてくるんじゃないのかなっていうのは思います」
約1年の空白期間を乗り越え、ピッチに戻ってきた佳史扶。より強くなった「NEWカシーフ」が新たなステージに向かう。
(FOOTBALL ZONE編集部・上原拓真 / Takuma Uehara)





















