浦和が抱える“問題点”「悪循環があると…」 求められる競争、本質的に足りないもの

浦和がFC東京に逆転負けを喫した【写真:徳原隆元】
浦和がFC東京に逆転負けを喫した【写真:徳原隆元】

再開初戦はFC東京に敗れた

 FIFAクラブワールドカップ(CWC)の終戦から3週間あまり、浦和レッズは7月20日にアウェーでFC東京と対戦したが、2-3の逆転負けを喫した。

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 浦和にとってCWCは夢舞台であり、もちろん出るからには1つでも多く勝って世界一を目指していく立場ではあったが、結果は3戦全敗で、グループステージ敗退だった。しかし、第一の目標は2006年シーズン以来、20年振りのリーグ優勝である。その意味でもJリーグ再開初戦となるFC東京との試合は、是が非でも勝利して先に繋げたかったが、浦和としては残念な結果になった。

 土日の試合結果を受けて、順位は暫定8位。首位に立ったヴィッセル神戸とは2試合少ない状況で勝ち点12差と、ここからの躍進によってはひっくり返せない差ではない。しかし、FC東京戦で見せたパフォーマンスを考えても、ここから相当な覚悟を持ってチームを上昇させていかないと優勝戦戦に加わることすらできないだろう。

 CWCでJリーグのライバルにはない経験と基準を持ち帰ったはずだが、ゲーム勘という問題があるにしても、東京戦の後半に見せた失速ぶりはいただけない。選手交代によって好転させられなかったことをマチェイ・スコルジャ監督をはじめとしたスタッフ、選手たちも受け止めて、ここからの戦いに向かっていく必要がある。何より、まずは今月中にある目の前の湘南ベルマーレ、アビスパ福岡とのホーム2連戦に勝利することが、逆転優勝への第一関門となるだろう。その上で、ここから浦和が勝ち点を大きく伸ばしていくために、どうするべきかを考察したい。

 1つはローブロックで耐える時間をできるだけ短く、少なくするための設計の見直し、意識の引き上げをしていくことだ。東京戦後に渡邊凌磨が指摘した課題が、それに当てはまる。渡邊は「ローディフェンスしていて、クリアも狙いのないクリアボールになる。セカンドボールを拾われて二次攻撃、そういう悪循環があると、ローディフェンスって押し込まれてる状態なので。ゴールに近いところでプレーされる時間帯が増えれば増えるほど、得点される確率って、やっぱり上がってくると思う」と語った。

 ローブロックのディフェンスはスコルジャ監督の得意とするところだが、本来ベースにするべき守り方ではない。高い位置からボールを奪いに行って、奪ったらしっかりとポゼッションしながら全体を押し上げることが基本で、前からの守備がうまくはまらなかったり、うまくボールを保持しながら運べす、相手に押し込まれた時に使うのがローブロックであるべきだ。もちろんリードして残り10分という状況で、無理に高い位置で試合を進める必要はないが、東京戦に関してはCWCのリーベルプレート戦やインテル・ミラノ戦のように、ローブロックの時間が長くなってしまった。

 東京戦に関しては、そこにゲーム体力の問題があったにしても、こういう戦いを続けていたら勝ち点は取れないということが、絵に描いたように伝わる象徴的な試合でもあった。相手とのマッチングで“たまたま”ポゼッションがハマることはあるが、そこが相手の守備と噛み合ってしまったり、試合中に対応されてボランチの安居海渡やサミュエル・グスタフソンが自由に前を向いてボールを受けられなかったり、パスの選択肢が限定されると、機能不全に陥って強引なサイド攻撃しかなくなってしまう。

初スタメンを飾った小森飛絢【写真:徳原隆元】
初スタメンを飾った小森飛絢【写真:徳原隆元】

浦和の前線に求められるもの

 現在の浦和は、例えば柏レイソルほど、洗練されたビルドアップのクオリティがあるわけではなく、そこは一朝一夕では改善されないだろう。それであれば、やはりボールを奪いに行く位置を高くすること、相手の背後を狙うボールを増やしながら、相手のディフェンスを押し下げることで、ポゼッションのためのスペースを広げることが大事になってくる。夏場の戦いとしてはリスクもあるが、このままでは勝ち点3を取り続けることはできない。

 そうした戦い方をするには前線からボールを追えるFWをより重視する必要がある。CWC前に加入したFW小森飛絢は浦和デビューとなった東京戦で、鋭い動き出しやシュート力など、可能性あるプレーを見せた。ただ、相手に前からプレッシャーをかけて追い込んでいく守備というところはもっと良くしていく必要がある。松尾佑介ならそこは計算できるが、現在はベンチ外が続く髙橋利樹は守備強度や前線の起点を高めるために、もっと活用してほしいアタッカーの一人だ。

 その一方で、ここまで22試合で28得点という数字を見ても、FWの得点力不足というのは明らかだ。2024年のJ2得点王である小森が、ゴールを量産すれば上積みはできるかもしれないが、そこに賭けるのはリスクが大きすぎる。できればFWにターゲットを絞って、移籍期間内に新戦力を加えるべきだろう。チームの構成力を引き上げるために、もちろんサイドバックやボランチと言ったポジションに新戦力を補強するプランも有効だが、前線で核になるようなタレントを加えることで、攻守の矢印が明確になる。

 チームに新たな刺激を与えて活性化する意味でも、新戦力の補強は必要だが、今いるメンバーを前向きに見直して、サブやベンチ外の選手にチャンスを与えることも、ここからのブレイクスルーにつながりうる。スコルジャ監督は良くも悪くも、一度信頼した主力を入れ替えたがらない。Bチーム、Cチームの選手が日々の練習でアピールしたとしても、序列を変えるチャンスすらなかなか与えられない傾向が強い。選手交代もCWC前から型にハマりすぎている。

 もしかしたら指揮官の中で、試合で使った場合のシミュレーションが出来上がっていて、その中では現在の主力組をサブ組が上回るイメージが描けないのかもしれないが、ここまで結果が出ていない状況で、ある種のシャッフルをしないというのはチームが澱んでしまう。ポテンシャルを見ればサブやベンチ外にも、この状況を変えうる選手はいるだけに、第10節の町田戦から5連勝した時の松尾がそうだったように、思い切った選手起用も必要だろう。

 繰り返しになるが、数字上はまだ逆転優勝の可能性が十分に残されている。ただし、現在の戦い方をそのまま続けているだけで、何かのきっかけひとつで上位との差を一気に埋められるほど、J1のステージは甘くない。戦術的、技術的なクオリティはもちろんだが、浦和が東京に敗れた翌日の上位対決で、鹿島アントラーズと柏レイソルが見せた試合の熱量を見ても、浦和が本質的に足りていないものを実感させられた。そこもアウェーでなかなか勝てていない理由の1つかもしれないが、まず得意のホームで連勝することで、上位進出の足がかりを掴むと同時に、チームの熱量を高めていきたい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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