浦和敗退の教訓、躍進組との決定的な差 森保監督発言に納得…日本代表のW杯勝算

浦和のクラブW杯敗退から学ぶべき教訓とは?【写真:ロイター】
浦和のクラブW杯敗退から学ぶべき教訓とは?【写真:ロイター】

クラブW杯の結果が証明…森保監督が掲げる「1対1」という基準の重要性

 クラブ・ワールドカップ(W杯)のベスト8は欧州5(チェルシー、パリ・サンジェルマン、バイエルン・ミュンヘン、レアル・マドリード、ボルシア・ドルトムント)、南米2(パルメイラス、フルミネンセ)、アジア1(アル・ヒラル)となった。

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 この大会は、代表チームによるW杯よりクラブ間の戦力差が大きい。欧州ビッグクラブに対して、その他のクラブが堅守速攻で挑むというのが基本的な構図になっている。

 2026年W杯における日本代表は優勝候補ではないが最弱のグループでもなく、中堅層に位置している。ただ、勝ち進んでいけば強豪国との対戦は避けられず、そこを勝ち抜けるかどうかは堅守速攻型の戦いを貫徹できるかどうかになると予想される。

 森保一監督は代表選手選考の基準として「1対1の強さ」を挙げていた。ちょっと当たり前すぎて聞いた時はやや拍子抜けしたものだが、今回のクラブW杯を見ると的確な基準なのだと思い直した。

 ブラジルの4チームはすべてベスト16に進んでいる。いずれも「弱者としての戦い」を勝ち抜いていた。グループステージでのブラジル勢は欧州勢に対して無敗(2勝2分)。ラウンド16ではフルミネンセがインテルに勝利した一方、フラメンゴがバイエルンに敗れ、ブラジル勢の対欧州は1勝1敗。ボールを相手に支配されて守勢に回りながら、欧州勢に対して3勝2分1敗と勝ち越しているのはさすがである。

 ブラジル勢に共通するのは個の強さだった。ローブロックの撤退守備で耐えながら局面の1対1で負けず、ボールを奪えば個人の力で前進あるいはキープする。堅守速攻のカギとして、堅守はもちろん速攻の成否に懸かっているのだが、もう1つはローブロックのまま一方的に攻め続けられる状況を避けることが挙げられる。

 インテルに対して先制したが、後半アディショナルタイムに逆転されてしまった浦和レッズにはこれがなかった。自陣で奪ったボールを前進させて相手を押し返す回数が少なく、攻められっぱなしになってしまっていた。ラウンド16でインテルを破ったフルミネンセは浦和と同じく撤退守備だったが、ボールを奪うとDFがドリブルではがすなど個人の能力で押し上げていて、それがインテルのエネルギーを奪い、終盤の反撃を抑えることにつながっていた。それどころかアディショナルタイムにダメ押しの2点目をゲットして試合を決めている。

 ラウンド16でマンチェスター・シティに4-3で競り勝ったアル・ヒラルも、ブラジル人のマウコムとマルコス・レオナルドの活躍が光っていた。

 守備の組織力については、どのチームも整備されている。ポイントはローブロックからいかに前進できるか得点できるかになるが、そこで重要なのが「1対1の強さ」になる。ブラジルはもともとそこに強みがあり、欧州に対してコンプレックスもない。総合的な戦力では欧州強豪には及ばないが、1対1で負けない強さがあれば勝機は掴めるわけだ。

 ボールを支配して優勢な立場で勝とうとするなら、また別の要素が重要になってくるが、堅守速攻で格上を倒す試合を想定するなら、確かに森保監督が掲げる「1対1」という基準は最重要と言える。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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