ロッカーに入った瞬間「ウワッ」 想像もしなかった383日…伝統の「6」を引き継いだ元代表の苦悩

FC東京DFバングーナガンデ佳史扶は383日ぶりに復帰を果たした
ロッカールームに入り、6番のユニフォームを目にした時には高揚感があった。FC東京は6月18日、味の素スタジアムで天皇杯2回戦のツエーゲン金沢戦を行い、3-1で勝利した。この試合、左サイドバックで先発出場したのは今シーズンから背番号6を託された23歳の元日本代表DFバングーナガンデ佳史扶だった。
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「ロッカールームに入って、6番『KASHIF』っていうのを見て、すごい『ウワッ』となりました」
昨季まで「49」を背負っていたバングーナガンデにとっては、2024年5月31日のサガン鳥栖戦以来、実に383日ぶりの公式戦だった。
約1年1か月前、好調だったバングーナガンデは、パリ五輪直前のアメリカ遠征のU-23日本代表に選ばれた。アピールできれば滑り込みでパリ五輪にも出場できるところだったが、この遠征中に足を負傷して1年以上の長期離脱となった。
試合前からの予定どおり、45分間のプレーを終えたバングーナガンデは、「プレッシャーだったり、緊張感だったりも少しありましたが、(負けたら終わりの)天皇杯でしたし、最近の(リーグで勝てていない)チームの状況もあって、絶対に勝つことがチームとしても個人としても目標だったので、そこに全部フォーカスしてピッチに立って戦いました。最低限の結果を得られたので、良かったなと思います」と、試合後のミックスゾーンで語った。
長期離脱していたバングーナガンデは、左サイドからクロスでチャンスを作る場面もあった。「1週間前に復帰してから、練習のなかで良い手応えがあったなかでの試合だったので、そこをどんどん出そうと思っていました。数字としてアシストや得点はつかなかったのですが、起点になるプレーを何個か出せたのは、今後に向けてすごくプラス材料になったかなと思います」と、手応えを口にした。
相手が2カテゴリー下だったこともあり、J1リーグの試合になれば、また強度も変わってくる。それでも実戦復帰できたことは、大きな自信になったようだ。「今できる100%は今日も出したつもりです。今後、それをどれくらい伸ばせるかはメディカルや監督と話しながらやっていきます。今日は45分と最初から決まっていましたが、自分では完全復帰しているつもりだったので『それ以上出ろ』と言われても出られる準備はしていましたし、出られる感覚も、自分のなかではありました。今後、元に戻すというよりも、より強化していきたいと思っています」と、負傷前の自身を上回ることを力強く宣言した。
改めて負傷していた期間について問われると、「1年は長いですけど、いつ治るかわからないような怪我だったので。1日1日が自分のなかで試行錯誤の連続で、1日1日考えること、やることが多かったので、いま1年経ってみると、あっという間の感覚でした」と、悲壮感を感じさせることなく、淡々と振り返った。
バングーナガンデの負傷は、詳細が分からないことが多かった。というのも、受傷したアメリカ遠征の初戦のU-23アメリカ戦は非公開だったため、バングーナガンデが試合に出ていたのかも不明だったのだ。負傷の発表が試合翌日に出たことから、試合に出て、その試合中に負傷したものだと思われていたが、非公開試合の前日練習で太腿を負傷していたことが明かされた。
これまで長期離脱を経験していなかったバングーナガンデは、「2、3週間で復帰できる感覚でいた」と明かし、長期化していくことに対して自身も「ビックリした時があった」と言う。何度か部分合流しては、再離脱という流れを繰り返していたが「やるしかないなというのと、痛みが出ちゃうのは仕方がない。落ち込む時もありましたけど、結局、進むしかないので。1年間、(全体練習)合流の直前にまた怪我してしまうことも何度かありましたが、本当にこのピッチに立つことを目標にやってきたので、一つの目標はクリアできました。こういうふうに少しずつクリアしていきたいです」と、ポジティブに語った。
その目標の一つが、かつて太田宏介や小川諒也、今夏チームに復帰した室屋成、そして今野泰幸も付けた「6」を自分の色に染めていくことだ。6番を背負うことについて「プレッシャーはありますけど、自分なりの6番をこれから皆さんに見ていただいて、作っていけるようにやっていければと思います」と決意を新たに、ミックスゾーンをあとにした。
(河合 拓 / Taku Kawai)













