久保建英は「苦しんでいる」 主力流出で緊急事態…地元は危機感「上手く対処できていない」【現地発コラム】
ヘタフェ戦で2試合連続先発の久保、徹底マークに遭い苦戦
2試合続けて先発出場した久保建英だが、ヘタフェ戦では存在感を発揮できずピッチを後にした。
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レアル・ソシエダは今夏、ロビン・ル・ノルマン(アトレティコ・マドリード)、ミケル・メリーノ(アーセナル)などを計6835万ユーロ(約110億円)で売却した一方で、スペイン人DFハビ・ロペス、パリ五輪優勝メンバーのU-23スペイン代表FWセルヒオ・ゴメス、クロアチア代表MFルカ・スチッチ、アイスランド代表FWオーリ・オスカルソン、モロッコ代表DFナイフ・アゲルドの5人を、計4550万ユーロ(約73億円)で獲得し、移籍市場を締めくくった。その収支はプラス2285万ユーロ(約37億円)で、補強費はラ・リーガで5番目、売却費は3番目に多いチームとなった。
懸念されていたポジションも最終的にはすべて強化し、本格的にシーズンを開始したソシエダにとって、開幕からの悪い流れを断ち切るために今季最初のインターナショナルブレイク前のラ・リーガ第4節ヘタフェ戦は重要な一戦となった。
エースのミケル・オヤルサバルを出場停止で欠くなか、イマノル・アルグアシル監督はサディクを今季初めて先発起用し、加入後わずか2日のアイスランド代表FWオーリ・オスカルソンをベンチ入りさせた。
再びスタメン入りした久保はいつも通り4-3-3の右ウイングでプレーしたが、この日のソシエダはヘタフェのハイプレスに苦しめられて連係が上手くいかず、最近では稀に見る低調な出来を露呈。ボール支配率で下回り、シュートはわずか1本、枠内シュートは0本という散々の内容だった(ヘタフェ:シュート16本、枠内シュート1本)。
チームがそうした状況では当然、久保も満足いくパフォーマンスを発揮することなどできない。チャンスを見出そうと右サイドでパスを要求するも、元チームメイトのディエゴ・リコに徹底的に警戒され、ほとんどボールを受けられなかった。
そんななかでも久保はこの日唯一のチャンスの起点となった。前半16分に左サイドに好パスを通すと、セルヒオ・ゴメスがグラウンダーのクロスをゴール前に送るが、サディクは上手く合わせられなかった。
後半15分に交代させられたが、これはパフォーマンスのせいというよりも、チーム全体の問題によるものだろう。試合は0-0で引き分け、ここまで4試合1勝1分2敗の勝ち点4で13位とスタートダッシュに失敗している。
試合後のフラッシュインタビューで久保は、「僕たち全員がベストの状態から程遠い」とコンディションの悪さを認め、「このままではいけない。特に得点面の改善が必要だ」と早くも危機感を感じているコメントをした。
スペイン各紙は辛口評価「何も上手くいかなかった」「突破もシュートもなかった」
今季最低の試合内容となったヘタフェ戦とあって、スペイン各紙の評価は全体的に低いものとなった。
クラブの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」はこの日の久保に対して、「最低の出来だった。拮抗した試合におけるキーマンであったが、何も上手くいかなかった。唯一注目すべきプレーは、サディクが追い付かなかったクロスを入れたセルヒオ・ゴメスにパスを送ったことだ」と酷評し、ブライス・メンデス、ベニャト・トゥリエンテス、アンデル・バレネチェアと並ぶチーム最低の「1点」(最高10点)をつけた。
もう1つの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」も、「ディエゴ・リコと対峙することよりも、衝突する可能性をより気にしていた。サイドで突破することも遠目からシュートを打つこともなかった」と上手く機能しなかったことを強調し、大半の選手と同じチーム最低タイの「2点」(最高5点)とした。
全国紙も似たような評価を下した。「AS」紙は久保とサディクに最低の「0点」(最高3点)をつけ、「マルカ」紙は「1点」(最高3点)だった(チーム最低はサディクで0点)。
久保は「チームを背負って立つ選手の1人になるのは間違いない」
ヘタフェ戦の取材に訪れていたスペインのラジオ局「ラジオ・マルカ」のナチョ・ドナド記者は、この試合でのソシエダと久保について、次のような感想を持っていた。
「うーん、今日はとにかく酷かった……」と言葉を詰まらせたあと、「ほかの試合ではもっといいプレーが見られていたのに、今日はどの選手もパフォーマンスをまったく発揮できていなかったし、誰1人シュートを枠に飛ばせなかった。レアル・ソシエダは主力選手を失ったことにまだ上手く対処できていない。早急にその点を修正しなければならない」と問題点を指摘した。
久保に対しては、「ほかの選手たちと同じように動きが悪かった。最初に交代させられた選手の1人になったが、新シーズンに入ってまだ調子を取り戻すのに苦しんでいるように思う」と言及。さらに、「主力選手が何人か抜けた今シーズン、チームを背負って立つ選手の1人になるのは間違いないし、これまで以上に注目を浴び、より厳しいマークに遭うことになるだろう。だからこそチームと協力してその状況を打開していく必要がある」との見解を述べた。
現在日本代表に合流している久保は、9月14日にホームでレアル・マドリード、17日に浅野拓磨が加入したマジョルカとアウェーで対戦する。チームの悪い流れを断ち切り、勝ち点獲得に苦しんでいる現在の状況を好転できるかどうか。今後に向けてこの2試合の結果が非常に重要となるだろう。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。