久保建英、来季ビッグクラブ入りは妥当か スペイン記者を直撃「日本ファンは狂喜乱舞すると思うが…」【現地発】
スペイン現地記者3人を直撃、今季ここまでの出来&去就動向に関する見解は?
スペイン1部レアル・ソシエダで2シーズン目を迎えた日本代表MF久保建英の活躍ぶりが際立っている。今季絶好調のレアル・マドリードのイングランド代表MFジュード・ベリンガムらを抑え、ラ・リーガの9月月間MVPを受賞するなど、その実力に対して欧州の名だたる名門クラブも熱視線を注いでいるようだ。
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評価が高騰するなかで、古巣レアルやイングランド1部マンチェスター・シティからの関心も伝えられるなど、海外メディア上では早くも去就動向が賑わいを見せる。着実に進化を遂げる久保は、ステップアップを果たす時期に来たのか。スペイン現地記者3人に、今季ここまでの出来とともに、去就動向に関する見解を訊いた。
■ラウール・フエンテス記者
スペインのラジオ局「ラジオ・マルカ」バルセロナ番記者
——今季ここまでのパフォーマンスを採点(100点満点)するなら?
95点を付けたいと思う。少しネガティブなものがあるとすれば得点面だが、彼はセンターフォワードではなくウイングだ。今季は概ね素晴らしいシーズンを送っていると思う。
——昨季と比べて最も変わった点
それは自信や信頼を得ていることだ。イマノル(・アルグアシル)が彼に、スペインで言うところの“チームの鍵を渡した”のだと思う。“君がベストプレーヤーだ”、“君がゲームを指揮する選手だ”、“君が中心だ”といったようにね。昨季はダビド・シルバのようなベテランの域に達している経験豊富な選手がいて、久保は彼に尊敬の念を抱いていた。しかしシルバが引退した今季、今度は自分がスターになれると彼は本気で信じていると思う。
——改善すべき点
強いて挙げるとすれば、さっき話したように得点面かな。守備面はここ数シーズンと比べてレベルが格段に上がっているのは事実だし、よりハードワークしてサイドバックをうまくサポートしている。イマノルもそのことは大いに喜んでいると思う。
——来季の去就
今のレベルを維持できるのであれば、レアル・ソシエダが彼を残留させるのは非常に難しいだろう。もし移籍するなら、私はイングランドに行くのではないかと思っているし、久保が最もフィットするのはプレミアリーグだと思う。
「真のアイドルとなっているサン・セバスティアンはパラダイスだ」
■マウリシオ・イディアケス記者
スペインのラジオ局「カデナ・コペ」 レアル・ソシエダ番記者
——今季ここまでのパフォーマンスを採点(100点満点)するなら?
点数を付けるのはあまり好きではないが、今季ここまでの出来に点数を付けるとしたら80点だろう。これは私の中でかなり最高点に近いものだ。入団時から懸命に取り組んでいるし、規律があり、周囲とコミュニケーションを取るうえで重要なスペイン語を話すこともできる。さらに今では若い子たちのアイドルにもなっているしね。
ラ・リーガで5ゴールと素晴らしい結果を出しているが、私はもっと向上すると確信している。これまでに所属したチームではゴールを決めるのが主な役割ではなかったが、ラ・レアルで昨季9ゴールを挙げているし、今季はそれを大きく上回ろうと奮闘しているよ。
久保がボールを持つと、何かが起こるのではないかという期待感を抱かせる。それは彼が取るに足らない選手ではないということを証明するものだ。もちろん毎試合ゴールを決められるわけではないし、最高のパフォーマンスを発揮できるわけではないが、彼は今、試合の結果を左右する決定的な役割を果たせる選手になっている。
——昨季と比べて最も変わった点
今季はフィジカル面がはるかに良くなった。イマノルはその点で素晴らしい仕事をしているよ。我々は仕事柄、スビエタ(レアル・ソシエダの練習場)でのトレーニングが非常に厳しいもので、クオリティーが高くてもフィジカルが足りないことで試合に出られない選手が存在することを知っている。イマノルのサッカーではそのことが重要視され、FWは攻撃よりも守備が優先される。例えば6ゴールを決めているストライカーのミケル・オヤルサバルは、守備の仕事が大いに評価されている選手だ。そして久保もフィジカル面がかなり向上していると思う。以前は今季ほどフル出場することはなかったはずだ。
——改善すべき点
今の久保は攻撃も守備も良く、ゴールを決め、アシストも記録している。現時点で改善点はあまりない。トップに近いところにいると思う。
——来季の去就
彼自身、レアル・ソシエダは自信や安らぎを与えてくれ、素晴らしいパフォーマンスを発揮し、ゴールを決めるためにベストの場所だ、と言っていた。開幕から8試合に出場してハイパフォーマンスを見せていた時でさえイマノルは、「タケはまだたくさんのことを改善しなければならない。私はより多くを期待している」と要求していたので、今後さらなるレベルアップが見込めるだろう。
私はこれからも久保がより良い結果を出せると思っているし、ここが彼にとって理想的な場所だと感じている。今夏、サウジアラビアから年俸手取り4000万ユーロ(約64億円)の4年契約というビッグオファーを断ったという話もあった。彼らはプロフェッショナルであり、そんな金額を断ることなど誰にもできないと思っていたから、それを聞いた時、私は信じられなかったよ。
久保はまだ22歳だ。もっと成長するためにここでもう少しプレーし、その後でステップアップするのがいいと思う。現時点で彼にとって理想的な場所はレアル・ソシエダだと思うが、オイルマネーであふれるプレミアリーグやサウジアラビアの脅威が存在するなか、彼が今の調子をキープしたまま冬の移籍市場を迎えることを私は今一番恐れている。
しかしサッカーにおける文化の問題はとても重要だ。たとえサウジアラビアに行ったとしても、文化があまりにも違いすぎるので久保は幸せを感じられないだろう。また過去プレミアリーグに行った若い選手たちの中で、シャビ・アロンソ(現レバークーゼン監督)がリバプールで成功を収めたような例があるが、おそらく久保は同じようにはいかないと思う。彼にとって、真のアイドルとなっているサン・セバスティアンはパラダイスだ。
「ビッグクラブではターンオーバー要員になる恐れが大いにある」
■カルレス・ルイペレス・ティラード記者
スペイン紙「ラ・バングアルディア」 バルセロナ番記者
——今季ここまでのパフォーマンスを採点(100点満点)するなら?
採点を付けるとしたら80点だ。最適な場所を見つけ、レアル・ソシエダで選手としても人間としても成長した姿を見せている。ラ・レアルは選手をしっかりとサポートしてくれるクラブだ。そのおかげで彼は今季も自分自身を表現することができ、優れた選手として輝いている。
——昨季と比べて最も変わった点
皆、久保の得点面ばかりに目がいくが、彼はドリブルを仕掛けるタイミングを心得ている選手だという点に注目している。以前はマラドーナのようなゴールを決めたいと常に思っていたようだが、今ではそのスタイルを変え、どこでドリブルすればいいか、いつパスを出せばいいかという判断がうまくできている。おそらくボールを失った時、相手のカウンターを誘発してしまう可能性があることを理解したのだろう。
——改善すべき点
ラ・レアルサポーターの中には、久保のパフォーマンスが必ずしも安定しているわけではないという意見があるかもしれない。しかし、彼はまだ22歳とまだとても若いにもかかわらず、プレーのレベルは高いところにあるので、そこまで改善すべき点は見当たらない。
——来季の去就
あと1年はラ・レアルに残ったほうがいいと思う。そして2026年開催のワールドカップに向けて、2025年にプレミアリーグ、もしくは今よりも少し大きなクラブに行くのがベストだと私は思う。
——来季の移籍候補にレアルとマンチェスター・シティが挙がっているが?
日本のファンは彼がビッグクラブに入れば狂喜乱舞すると思うけど、実際に移籍した場合、常に出場できるわけではないという事態を考慮しなければならない。あまりにも上のビッグクラブに行ってしまうと、ターンオーバー要員になる恐れが大いにあるし、今のように重要な存在となることは非常に難しいと思う。それはプレミアリーグでもラ・リーガでも変わらないだろう。
(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。