松本山雅が示した“攻撃スタイル” ヤングタレント集団を打ち負かせたユース出身FWの衝撃ハットトリック
【識者コラム】気鋭のヤングタレントが揃う北九州を相手に、FW小松が3得点
ミクニワールドスタジアム北九州で行われたJ3ギラヴァンツ北九州と松本山雅FCの一戦は、アウェーの松本が4-2で、激闘を制した。松本は霜田正浩監督が掲げる攻撃的なスタイルを押し出す戦いぶりで、気鋭のヤングタレントが揃う北九州との真っ向勝負に打ち勝った形だ。
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この試合で、松本のFW小松蓮がプロのキャリアでハットトリックを達成。1点目はコーナーキック(CK)の流れからDF野々村鷹人の折り返しを押し込み、2点目はDF山本龍平の左からのクロスに、2人のディフェンスに挟まれながらも高さを生かして、ドンピシャのヘッド。そして3点目は山本のクロスが開いてディフェンスに跳ね返り、高く上がったボールを目の覚めるような左足のオーバーヘッドで捉えて、ゴールネットに突き刺した。
「ゴール前にきそうだなって思った瞬間に、ゴールポストとゴールポストの間にいるイメージで、そこに来たらとにかく足を振ると。試合にも変わらず、トレーニングと一緒で、90分を通してそこは意識しています」
松本のアカデミー育ちでもある小松はかつて、上田綺世らと東京五輪に向けた代表チームに招集されたこともある期待のストライカーだった。そこから当時、霜田正浩監督が率いていたレノファ山口での”武者修行”を経て松本に戻ったが、昨シーズンは5得点にとどまり、チームはJ2昇格を逃した。
「去年のシーズン終わってから色々と自分で変えていて、継続してやってることが表れたというのは自信になるし、本当に嬉しいです」
そう語る小松は個人でメンタルトレーナーを付けて、食事から睡眠まで、全ての生活を見直して、このシーズンに備えてきたという。”恩師”の霜田監督もそうした努力を知っているからこそ、さらに期待を懸けてきたこともあるだろう。キャリアで100ゴール位以上をあげているベテランのFW渡邉千真が負傷したチーム事情もあるが「特にエースの自覚みたいなことは意識していない」と語る。
それでもシーズンが終わった時に、一番のゴール数でJ3優勝、J2昇格に貢献したいという思いは強いようだ。
「全てが結果に表れるわけではないですけど、人間、偶然じゃないというか。毎日、24時間をこの1試合のためにデザインして来たので。そういう部分が結果として表れてくれるのは本当に今後の自信にもなる。これを毎試合、続けていくために、明日からまた分析して。次の試合に点取るためにはどうすればいいか考える。もう毎日、考えているところというかサッカーやってる限りはそうだと思います」
今回のハットトリックは大きなニュースとなり、オーバーヘッドによる3点目は松本山雅の公式SNSを通じて拡散されている。「これはすごい」と言った声が多く聞かれるが、小松の立場はあくまでJ3のFWだ。
今シーズンはカテゴリー、国内外に関わらず“東京五輪のメンバーに入れなかった東京五輪世代”の活躍が目立っている。小松もその1人だが、1つ1つの試合に100%の準備をして臨み、結果を積み重ねていった先にこそ、ストライカーとしての高みはある。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。