横浜FMマルコス・ジュニオールが見た「30年目のJリーグ」 「日本ではあまりない」…さらなる発展へ指摘した“王国”との相違点

横浜F・マリノスFWマルコス・ジュニオール【(C) 1992 Y.MARINOS】
横浜F・マリノスFWマルコス・ジュニオール【(C) 1992 Y.MARINOS】

【インタビュー前編】横浜FMのブラジル人アタッカーが抱く日本サッカーの印象

 Jリーグは今年で30周年の節目を迎えた。リーグのプロ化により、日本サッカーは紆余曲折を経て発展を遂げてきたなか、レベルの向上へ一役買ってきた存在として忘れてはならないのが、世界各国から日本にやって来た外国人助っ人たちだ。今回、「FOOTBALL ZONE」ではJリーグ助っ人特集として複数コンテンツを展開。ここでは昨季J1王者の横浜F・マリノスFWマルコス・ジュニオールのインタビューを2回に渡ってお届けする。在籍5年目を迎えたブラジル人アタッカーが抱く日本サッカーの印象とは?(取材・文=石川 遼/全2回の1回目)

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 横浜F・マリノスのブラジル人FWマルコス・ジュニオールは2019年にブラジルのフルミネンセから加入し、今年で5年目のシーズンを迎えた。1年目の2019シーズンにJ1で33試合15得点をマークし、チームメートだったFW仲川輝人(現FC東京)とともに得点王のタイトルを獲得し、ベストイレブンにも名を連ねた。20年シーズンに28試合11得点、21シーズンに33試合9得点とJリーグの舞台でコンスタントにゴールを記録。22年シーズンは怪我もあって自身初のリーグ戦無得点に終わっただけに、今年は復活に懸ける思いもひとしおだろう。

 瞬く間に横浜FMに欠かせない選手となったマルコス・ジュニオールだが、ブラジルでプレーしていた当時はJリーグのことをほとんど知らなかったという。

「日本に来るまではJリーグに対する印象があまりなく、どういうリーグなのか詳しくは知りませんでした。正直に言えば、私自身も日本で長くプレーすることはないだろう、少しプレーしたらすぐにブラジルに帰るんだろうと考えていました。ですが、実際にプレーしてみるとJリーグはすごく質が高く競争力のあるリーグだと感じました。近年もすごく能力の高い選手が次々と出てきていて、今後もさらにレベルが高くなっていくんじゃないかと思っています」

 今年1月に30歳を迎えたブラジル人FWは実際に体験して分かったJリーグのレベルの高さ、そこでプレーする選手のクオリティーに驚かされたという。プレースタイルもブラジル時代とは変わってきたと自身の変化について口にする。

「ブラジルでは主にウインガーとしてプレーしていて、今のようなトップ下でプレーしたのは1年くらいだったと思います。ブラジルではよりスピードを生かしてプレーをしてましたけど、日本に来てトップ下でプレーするようになってからは周りをうまく使うことを意識するようになりました。歳を重ねたことも関係あるかもしれませんね」

 マルコス・ジュニオールはJリーグの特徴について「試合中の切り替えの早さや戦術的な約束事を実行する能力の高さが素晴らしい」と話している。監督からの要求にしっかりと応え、規律正しくプレーする選手が揃うJリーグには感銘を受けていた。そして、サッカー以外の生活においても日本人の規律正しい部分には驚かされていたようで「私も規律のところはしっかりしてるほうなんですが、日本に来て僕よりもはるかに規律のある人がたくさんいたことはいい意味でビックリしました」と日本の印象を語った。

Jのレベルアップへ…マルコス・ジュニオールが感じた必要なもの

 日本サッカーのレベルの高さに感銘を受けていたマルコス・ジュニオールだが、その一方でJリーグがさらにレベルアップするためには必要なことがあると感じているという。そのことについて尋ねると、日本とブラジルの違いを例に挙げて見解を述べている。

「おそらくブラジルと日本の大きな違いは、育成年代の選手にもプロとして接しているかどうかという点だと思います。ブラジルでは、指導者がまだプロに昇格していない選手たちにもプロとして接しています。そうすることで早くからプロとしての責任や意識を持たせているんです。日本では育成のためのクラブハウスを作るというところもあまりないですし、さらにヨーロッパをはじめとした違う国のコーチや選手を連れてくるというところに関してもよりオープンになって世界に目を向けるとよいのではないかと思います。そういった取り組みをすることで将来的にすごい選手が出てくるはずです。ただ、そういった優秀な選手がトップチームに昇格してきて外国人が入る枠が減ってしまったら私たちがちょっと困ってしまいますけどね(笑)」

 次々と未来のスター候補生を輩出しているサッカー大国ブラジル出身のマルコス・ジュニオール。激しい競争の中から一流選手を生み出すためには、若いうちから選手にプロ意識を植え付けることが重要だと感じているようだ。

[プロフィール]
マルコス・ジュニオール/1993年1月19日生まれ、ブラジル出身。フルミネンセFCの下部組織からトップチームへ昇格しプロデビュー。2019年に横浜F・マリノスへ加入すると、リーグ戦で15得点をマークし、J1優勝に貢献。得点王とベストイレブンに輝いた。打開力を秘めたドリブル突破や決定力を持ち味とし、J屈指の助っ人アタッカーとして君臨する。

(石川 遼 / Ryo Ishikawa)



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