“自分史上最上”の部類に入る好調ぶり FC東京“10番”東慶悟が「サッカーが楽しい」と語る訳

東慶悟は「サッカーが本当に楽しいなと思える」と充実感を覗かせる【写真:後藤勝】
東慶悟は「サッカーが本当に楽しいなと思える」と充実感を覗かせる【写真:後藤勝】

33歳となる今年、「すごく充実させたいという想いが強い」

 おそらく、東慶悟史上最上の部類に入る好調ぶりだろう。そうした個が高いレベルで競う2023年シーズンは、19年シーズン以来となる優勝争いに加わりそうな気配がある。だが東はすでにそれを当たり前のものとして、もっと根源的な動機につき動かされ、サッカーに熱中していた。

「もちろんリーグ優勝は毎年狙っていますが、そのうえで、今改めてサッカーをやっていてすごく楽しいんです。試合ができる喜びがあって……、一周二周回ってか分からないですけど、サッカーが本当に楽しいなと思えるので、この1年をすごく充実させたいという想いが強いですね」

 長くプロ選手生活を続けていれば、つらいことも数え切れないほどある。それらを乗り越えたからこそ、ちょっとした困難は障害とも感じず、眼の前のサッカーに集中する域に達したのかもしれない。

「自分をおっさんとは思っていないですけど(笑)、(デビューの地点よりも)明らかに現役をやめるほうが近い年齢。そういうことも含めてすごく試合が楽しいし、練習も楽しいと思えてきます」

 キャリアの終盤に差し掛かって、己を燃やし尽くそうとする様子がありありと分かった。

 その一方で、ベテランらしく冷静さも保っている。どうしても注目される2月18日の浦和レッズとの開幕戦を控えても、背番号10は熱くなりすぎてはなかった。

「開幕戦とはいえ、34試合の中の1試合に変わりはない。もちろん勝たないといけないんですけど、それがすべてではないですし、チームとしてキャンプでやってきたことをやって、積み上げていくしかないという想いです。勝敗はどうなるか分からないものなので、だからこそ自分たちがやってきたことを出すことが重要。開幕から10か月近くシーズンがあるので、100%そこ(開幕)に持ってくる必要もないし、最後に優勝するチームであることが一番いい。開幕戦、開幕戦と周りが煽りたくなるのは分かりますが(笑)、僕はそういう気持ちです」

 今年のチームは1日1日の練習に成長が見え、最新の状態が即、最強の状態となっているように映る。そのベストを眼の前の試合にぶつけ、負けたとしてもさらに強くなった状態で次節を迎えられるという自信が東にはありそうだ。

[プロフィール]
東慶悟(ひがし・けいご)/1990年7月20日生まれ、福岡県出身。大分U-18―大分―大宮―FC東京。J1通算348試合26得点、J2通算29試合6得点。昨季後半戦から4-3-3システムのアンカーとして新境地を拓き、ハードワークを厭わずにゲームを組み立てる配球役、中盤のフィルター役をこなした。2019年からは10番を背負い、19~21年にはキャプテンも務めるなど、FC東京の中核を担うメンバーの1人だ。

(後藤 勝 / masaru goto)



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後藤 勝

後藤 勝
ごとう・まさる/小平市在住のフリーライター。出版社、編集プロダクション勤務を経て独立。1990年代末に「サッカー批評」「サッカルチョ」などに寄稿を始めたことがきっかけでサッカーに携わるようになり、現在はFC東京、FC岐阜、東京都社会人リーグを中心に取材。著書に「トーキョー ワッショイ! FC東京 99-04 REPLAY」(双葉社)「エンダーズ・デッドリードライヴ-東京蹴球旅団2029」(カンゼン)がある。ウェブマガジン「青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン」「ぎふマガ!〜FC岐阜を徹底的に応援する公式ウェブマガジン〜」の執筆を担当。

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