神奈川県が2022年のJリーグを席巻 際立った2クラブのコントラスト…重要な共通項とリーグを盛り上げるエンターテインメント性

川崎とともに2022年のJリーグを席巻した横浜FM【写真:徳原隆元】
川崎とともに2022年のJリーグを席巻した横浜FM【写真:徳原隆元】

【J番記者コラム】横浜FMの選手たちが満面の笑み、悔しそうな川崎勢に反攻の予感

 神奈川県が2022年のJリーグを席巻した。

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 11月7日に開催されたJリーグアウォーズで今季のベストイレブンが発表され、最終節まで優勝争いを演じた横浜F・マリノスと川崎フロンターレから5選手ずつが選ばれた。
 
 ベストイレブンはJ1各クラブの監督及び選手による投票で決まる。既定の試合数さえクリアしていれば、それ以外に絶対的なルールはない。所属チームは降格の憂き目に遭ったものの自身は14ゴールを挙げて得点王に輝き、ベストイレブンにも選出された清水エスパルスのFWチアゴ・サンタナが分かりやすい例だろう。あくまでも個人ベースの相対評価が決める賞で、究極を言ってしまえばチームの成績は関係ない。

 とはいえサッカーがチームスポーツである以上、完全に無視するわけにもいかない。印象の話になってしまうが、ある程度の納得感は必要だろう。その点で前出のT・サンタナを除く10人が覇権を争った2チームから選ばれたのは、落ち着くべきところに落ち着いた印象がある。

 そんななかで興味深かったのは、神奈川県2チームのコントラストだ。

 優勝した横浜FMから選ばれた5選手はいずれも初受賞。限られた取材時間でも興味深いエピソードや背景が見え隠れし、それぞれが感慨深い様子だった。MVPも受賞したDF岩田智輝がJ3プレー経験者として初めて名を刻み、両親や妻への感謝を述べた温かいスピーチが象徴するように、とにかくフレッシュさが前面に出ていた。

 反対に、川崎は経験豊富なMF家長昭博が「チームとしても個人としても非常に苦しいシーズンだったなという印象。求められているのはタイトルを獲ること。残念なシーズンだった」と絞り出した言葉が置かれている立場を象徴している。2連覇中のチャンピオンとして臨んだチームにとって、2位では成功として受け入れられない。両チームは取材対応の最後、順番にフォトセッションを行った。横浜FMの選手たちが満面の笑みで撮影に応じる姿を壇下から眺める川崎勢の悔しそうな表情が来季の反攻を予感させた。

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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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