「今の応援、本当に意味あるのか」 Jリーグの声出し規制でファン離れ実感、湘南ゴール裏サポーターの胸中

「やっぱりこれだよな」 熱い思いがこみ上げた日本代表戦の光景

 3月下旬、髙橋さんの目に、ある光景が飛び込んできた。「オ~、バモニッ~ポン! ニッポン、ニッポン、バモニッ~ポン!」。カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選第9節、敵地オーストラリアで行われた一戦で、日本はW杯本大会行きを決めた。応援規制が敷かれていない現地のスタンドには、知り合いの姿もあった。

「やっぱりこれだよな」。試合後、スタジアムには日本の応援チャントが鳴り響く。その声を受けて、選手と喜びを分かち合う光景を目にした髙橋さんの胸には、熱い思いがこみ上げてきた。

「僕らが知っている人たちがオーストラリアまでいって声を出して応援をしているのを見て、凄く高ぶるものありましたよね。とにかく、羨ましいなと。なのでそこは求めたいなというか、戻ってきて欲しいなって思いますね」

 Jリーグは6月以降の公式戦から、声出し応援エリアを段階的に導入。世界中のスタジアムで歓声が戻りつつあるなか、ようやく日本でもサッカーの応援文化の回復に光が差し込んだ。それでも、政府方針に沿った来場制限、不織布マスク着用の義務など、依然として規制はかかる。自由を完全に取り戻せたわけではない。

「声出せるといってもマスクしながらってきついですよ(笑)」。複雑な思いを覗かせながら、しがらみから脱する日が一刻も早く訪れることを、髙橋さんは切に願っている。

「とにかく普通に応援できる状態、なにもストレスなく、気にすることなく応援できる状態になりたい。どうしても今、サッカーから人が離れていっているので、今の応援の現状だったらどうにもできない。とにかく早く規制がなくなればいいなって思います。なくなったらもっと盛り上がるんじゃないかなって。『今の日本サッカー界に一番求めるものは何ですか』と問われれば、そこに尽きるんじゃないかと思いますね」

 コロナ禍に見舞われ、サポーターによる熱気が奪われて久しい。Jリーグのスタジアムに熱狂の渦が舞い戻ってくることを強く願いながら、髙橋さんはゴール裏のスタンドから日々、サッカー界の今を見届けている。

(FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓 / Akira Hashimoto)



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