堂安律がオランダで掴んだ名声 ドイツ移籍報道も「PSV内部の評価は高い」…現地の“リアル評”とは?

現地で頻繁に聞かれた「堂安といえばヒールキック」というフレーズ

「CL(UEFAチャンピオンズリーグ)プレーオフやリーグ戦序盤を戦った時のPSVと、今のPSVは全然違うメンバーだが、見ていてとても面白い。特に左SB(当時)のマウロ・ジュニオール、トップ下のゲッツェ、右サイドハーフの堂安は似たような技巧派タイプで、ショートコンビネーションがとても良い」(ピエール・ファン・ホーイドンク)

「堂安はラインの間で上手くポジションを取ってプレーする。映像で見ても分かるように、彼は周囲をよく見渡してからプレーする。今のPSVを見るのは面白い。堂安、グティエレスたちは、一度はPSVで居場所をなくした選手だ」(ラファエル・ファン・デル・ファールト)

 UEFAヨーロッパリーグのシュトルム・グラーツ戦ではダブルタッチからジャンピングヒールキックでアシストを記録し「堂安といえばヒールキック」というフレーズをオランダで頻繁に聞くようになった。

 一度はPSVで構想外となり、昨季はドイツのビーレフェルトでレンタルに出された堂安は、今季もブンデスリーガでプレーする希望を持っていた。しかし、シュミット監督はビーレフェルトで成長する日本人アタッカーを再評価し、昨年4月の時点でPSVへ呼び戻すことを決めていた。PSVに戻る気持ちを失ってしまった堂安に対し、シュミット監督は手を焼きながらなんとか説き伏せた。

 堂安だけではない。マウロ・ジュニオール、グティエレス、ブルマも不遇の時を経た選手たちだ。そんな彼らが「驚異のBチーム」を形成しセンセーショナルな働きを見せた。

 今年の1月、堂安はオランダの公共テレビ局「NOS」でPSVでの充実した日々をこう語っている。

「クラブでもチームでも、とても快適に過ごせてます。朝起きると「トレーニングに行きたいなあ」って思ってエネルギーを感じるんです。チームメイトやスタッフに会うのが楽しくて仕方がありません」

 シーズン後半戦のPSVは「Aチーム」と「驚異のBチーム」を融合したチームになり、堂安は爆発的なドリブルを武器にするMFノニ・マドゥエケとポジションを争い、シーズン終盤戦ではMFジョイ・フェールマンの右サイドハーフコンバートによって、さらに過酷な競争にさらされた。

 だが、今季のPSVはフォア・ザ・チームの姿勢が徹底され、非常にまとまりのあるチームだった。シュミット監督が選手を公平に扱ったこと、そして、過去の悔しさを跳ね返した選手たちが活躍し、ポジティブな空気をチームにもたらしたことによって、誰もがチームのために身を粉にして戦うようになった。もちろん堂安も先発、交代出場にかかわらず、変わらぬ姿勢でプレーし続けた。

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中田 徹

なかた・とおる/1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグなどを現地取材、リポートしている。

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