“4戦連発”絶好調の奥川雅也、ドイツで大活躍の秘密 「結構工夫している」こだわりとは?
【ドイツ発コラム】ビーレフェルト、なぜ好調? 理由はチームスタイル変更と奥川の得点力
16節から18節まで3試合のドイツ1部・ブンデスリーガ順位表を見たら、驚きの結果がそこにはあった。
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1位はバイエルン・ミュンヘン? ボルシア・ドルトムント?
いや、ドイツ1部で日本人初の4試合連続ゴールを達成した奥川雅也がエースとしてチームを引っ張るビーレフェルトだったのだ。ボーフム(2-0)、ライプツィヒ(2-0)に連勝し、18節では好調フライブルク相手に0-2から追い付いての引き分け。同節ではライバルチームもそれぞれ引き分けているため、順位は変わらず17位のままだったが、ここ最近の好調さには目を見張るものがある。
それにしてもなぜ急に?
好調の理由はチームスタイルの変更と奥川の得点力だ。
「自分たちのプレーの仕方を変更して、自分たちでボールを保持できるようになるためにより狙いを持ったプレスを仕掛けることができたし、そこからチャンスを作り出すことができた。あれが追撃が成功した鍵になったと思う」
これはフライブルク戦後に公式ホームページでアップされていた奥川の談話。この試合では後半15分に奥川が見事な右足ミドルシュートで反撃ののろしを上げると、そこからビーレフェルトは試合の流れを掌握することに成功し、同点に持ち込むことができた。
奥川のゴールがチームに勢いをもたらしたというのも大きい。だがそれ以上に、チーム全体として引いて守るのではなく、前から相手にプレスを仕掛け続けて自分たちでリズムを掴み出すという空気が生まれたことが決定的な要素となった。
ボーフム監督のトーマス・ライスは試合後の記者会見で「ビーレフェルトは『エークリッヒ』にプレーすることができるやりにくいチーム」と眉間にしわを寄せながら評していた。「エークリッヒ」とは直訳すれば「おぞましい」とか「汚らしい」となり、「エークリッヒにプレー」とは「汚れ仕事をいとわずに体を張ってプレー」と表現することができる。
相手に押し込まれる時間も少なくはないが、それでも守備ラインを深くしすぎずに前線からボールを奪いに走り続ける。かいくぐられてもすぐに戻ってギリギリのところで身体を投げ出し、最後のところで跳ね返していく。
「これまでの数試合でいいゲームができていた。後半はチームで力を出し切って、勝ち点1をみんなでもぎ取った。僕らにとっていいサインだと思う。それをチームみんなでピッチ上で表現できたら、いつでもいいゲームをすることができる」
フライブルク戦後の奥川のコメントには、チームとして向かうべき道が確かに言い表されているし、そうしたチームの頑張りがゴールへ結び付くという流れができていることが自分たちの自信となり、手応えとなり、さらなる力を生み出す要因となっているわけだ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。